専門家コラム 2024年02月14日06:45

【年始特別インタビュー】ベトナムの人材市場

エミダスマガジンは、人材紹介会社・人材育成機関とのインタビューを通して、ベトナムの人材市場についての2023年の振り返りと2024年の展望をお届けします。

【年始特別インタビュー】ベトナムの人材市場

G.A.Consultants Vietnam Co.,Ltd.

◆畠中菜穂(Area Manager/Southern Region)

◆人材紹介・ベトナム進出サポート 

◆https://gagr.co.jp/ https://r-vietnam.com/about-us.html

2023年はベトナムマーケットで人材事業を行う上で、ベトナム経済の景気動向の影響を受けて、前年と比べ「厳しい」と感じる1年でした。弊社が運営するベトナム人求職者向けポータルサイトVieclambank( べクラムバンク) で実際のデータを見てみると、求職者の登録数では2023年は前年比1.4倍近い増加傾向、また求人件数は実際は前年とほぼ変わらない数でした。これを読み解く背景としては、経験の浅いジュニアクラスの求職者の増加。一方で募集求人は中枢の役割を担うミドルクラスやマネージャーポジションを含む上位層、即戦力を求める経験者採用が多かったことが挙げられます。製造業では組織を強固にする目的での採用や、非製造分野では利益確保のためのベテラン営業職の募集が特徴的でした。 

転職マーケットが落ち着いているという状況は、企業にとって良い面もあります。「今年は離職が本当に少なく、その分腰を据えて教育にも時間をかけることができ、社員の成長も見られた」という声を複数の企業様から耳にすることがございました。

2023年は景気の落ち込みに反応して転職マーケットとして動きがにぶかった上位層ですが、おそらくこれからの景気回復と新規進出企業の増加に伴い、転職マーケットへ戻ってくることが予想されます。こういった人材の動きだしとともに、防御態勢の形から2024年は組織の基盤を固めつつ、事業を拡大する年になっていくのではないでしょうか。

TopCV Vietnam JSC

◆グエン・バオ・ロン(Associate Manager, Community & Partnership)

◆求人サイト・履歴書作成サービスを運営

◆https://www.topcv.vn/

2023年は変化の多い年であった。国際紛争、法制度の変更、インフレ、サプライチェーンの混乱等、すべてが経済の好ましくない状況に反映された。こうした課題に直面し、多くの企業は財務状況を安定させ、事業運営の柔軟性を維持するための対策を講じなければならなくなった。そのため支出を削減し、生産プロセスを最適化し、さらには財務上の負担を軽減するために従業員を解雇した企業も多かった。

また、2023年は多くの技術的ブレークスルーも目撃された。その一つは、ChatGPT等AI チャットボットの普及である。企業は顧客体験の向上、ワークフローの最適化、情報の相互運用性の強化のために、これらの技術を積極的に採用している。人工知能の統合はビジネス戦略における重要な要素になりつつあり、さまざまな分野の企業に新たな展望を開いている。

各企業でZ世代が増加し、今後大きな労働力になると予想されることから、人材市場も大きな変化に直面している。テクノロジーの時代に生まれ育ったZ世代は、その強い個性と創造性によって、職場環境に特別な要求をしている。彼らは柔軟性、テクノロジーを統合した職場環境、持続可能な開発目標に向けた取り組みを切望している。このため企業は、この新しい世代の従業員を惹きつけ、定着させるために、人事戦略を適応させ、最適化する必要に迫られている。同時に、Z 世代の文化的多様性と視点は、多様で豊かな職場環境を作るための課題でもあり機会でもある。 2024年は、企業にとって引き続き厳しい年になると予想される。このような困難な時期には、前年から適用されている支出の引き締め政策が翌年にも及ぶ可能性があり、様々な面でさらなる削減や改善が求められる。

コスト削減の目標と企業の人材戦略のバランスをとるために、ベトナムで総合求人サイトを運営するTopCVが主催する「TopCV Insights」セミナーのシリーズに講演した人事専門家からいくつかの提案を紹介する。

第一に、企業は自社にふさわしい人物像を再構築する必要がある。現在の不安定な状況では、ビジネス環境に適応するために重要となる新しいスキルが生まれている。加えて、企業は研修や教育を通じて、現在の人材を育成することに注力する必要がある。スキルや知識を更新することで、従業員は新たな課題に適応し、会社の発展に積極的に貢献できる。

第二に、厳しい経済状況の下で、従業員の期待に応える給与や賞与を維持することが困難な場合、企業は他の福利厚生にもっと力を入れることができる。適用可能な戦略のひとつは、キャリア開発とトレーニングに関する方針を強化することである。これは、従業員の個人的なスキル向上に役立つだけでなく、企業内での昇進の機会も創出する。

第三に、企業は、SNSや採用プラットフォームに募集のお知らせを掲載するなどテクノロジーを採用に応用することで、コスト削減と採用効率の向上を両立させることができる。さらに、企業はChatGPT等AI チャットボット技術を活用し、職務記述書の作成や採用プロセスの自動化を行うこともできる。また、オンラインミーティングアプリケーションは、オンラインで候補者と迅速に面接するのに便利だ。

Ly Thai To College

◆グエン・ティエン・ドン(President)

◆人材育成の専門学校

◆https://lic.edu.vn/

企業は現在、最大の問題は「再教育」であるとよく言っている。つまり、企業が新しい従業員を雇うたびに、その従業員をすぐに働かせることはできず、うまく働けるように再教育しなければならないということだ。しかし、私の考えでは、これは完全な再教育ではなく、新入社員が会社の文化、作業プロセス、ビジネスの方向性を理解するためのトレーニングだけである。

もし企業が新入社員の再教育に時間を費やしたくないのであれば、学校と協力して在学中の学生を指導するしかない。大学と比較して、職業教育機関の利点として挙げられるのは、職業教育機関は、企業と組み合わせて独自の研修プログラムを構築し、企業に適格な人材を生み出すことができる。例えば、現在Ly Thai To College では、同じバクニン省にある企業と協力し、その企業に特化した人材を育成するための研修プログラムを展開している。

企業にとって、特化研修プログラムは、ニーズや職務要件を満たす専門スキルを持つ人材を保護するものである。学生は、在学中に企業の実際の事業に従って指導・訓練されるため、職場環境に入る際に素早くなじみ、適応することができる。学生にとって、このプログラムは卒業直後の就職機会を保証するものだ。同時に、学習過程において、学生は希望する職業で直接実践する機会があり、学習した知識を応用する能力を最適化することができる。

産業界向けの人材育成を専門とする専門学校の立場から、私たちは常に、学習は生涯活動であり、仕事をするためのものであると考えている。そのためには、教育機関と企業との協力が非常に重要だ。Ly Thai To College では、常に企業との関係構築に努め、企業に学校を訪問し、学生が必要とする知識や技術について共有してもらう。

あらゆる変化が急速かつ予測不可能に起こるこの時代、企業が従業員に本当に求めているのは、専門的な知識やスキルのほかに、新しい技術を身に着けるための自己学習能力である。自己学習能力もまた、労働者が持続可能で深いキャリアを築くための重要な要素である。多様化する労働市場のニーズに応えるだけでなく、競争が激化する労働環境において自らの地位を維持するためにも、労働者は自ら新しい知識を学び、応用する必要がある。

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