専門家コラム 2023年12月06日09:46

ベトナムビジネスの基礎知識(第44回)労働許可書の申請について

本年9月18日、労働許可書に関する政令 No.152/2020/ND-CP(政令 152)の一部を修正・補則する政令No.70/2023/ND-CP(政令70)が公布・施行されましたので、一般的な事例における新規取得手続きについて解説します。

ベトナムビジネスの基礎知識(第44回)労働許可書の申請について

Ⅰ.申請の手順

(1) ①外国人の就労許可のための地域の労働傷病兵社会局(労働局)の承認書の申請・取得、続いて②労働許可書の申請・取得、となります(同政令第1条2項)。

(2) 来年1月1日以降、①の時点の遅くとも15日前までに、労働局または人民委員会委員長のポータルサイトで、外国人雇用予定のポジションに対して、ベトナム人の募集通知を掲載する必要があります(同条c)。それで採用できない場合、雇用者は外国人の雇用を開始できます。

(3) 申請から結果取得までの法規上の日数は、①では10営業日(同政令第1条2項)、②では5営業日です(同政令第1条6項)。

Ⅱ.必要な資料

(1) 上記①の必要書類(同政令第1条2項)(i)外国人雇用許可の申請書(ii)企業登録証明書、駐在員事務所の設立許可書等の公証写し

(2) 上記②の必要書類(政令152第9条、政令70第1条13項g)

(i)労働局の承認書の公証写し

(ii)労働許可書の発給申請書(政令に添付)

(iii)企業登録証明書、駐在員事務所の設立許可書等の公証写し

(iv)健康診断書

(v)本人のカラー顔写真2枚

(vi)パスポートの公証写し

(vii)雇用契約書、又は任命書

(viii)無犯罪証明書

(ix)経歴や学歴を証明する書類、又は発行済の労働許可書。

Ⅲ.外国人が就労可能な職位と必要な証明書類

(1) 就労可能な職位

外国人の就労が認められる職位では(ii)が追加されました。

(i)管理者:現地法人の代表者や駐在員事務所の所長(政令152第3条4項)等です。学歴関連の書類は不要ですが、勤務先などが発行する管理者としての勤務経験の証明書が必要です。勤務年数の法規上の規定はありませんが、通常はベトナム国外で課長職以上で3年以上の経験が要求されます。場合によっては、企業の定款や登録証明書などの書類も求められます(政令70第1条5項b)。

(ii)執行役員社長:現地企業の支社・駐在事務所・営業拠点の長、又は企業における1つ以上の事業を直接運営し、その事業部門の長(政令70第  1条1項b)この証明書類は上記(i)管理者と同様です(政令70第1条5項b)。

(iii)専門家:少なくとも大卒以上の学位、就労予定の職務で3年以上の業務経験が必要です(政令70第1条1項a)。政令70により、大学での専攻と職務の一致は不要となりました。必要書類は、大学卒以上の学歴の証明書、企業が発行する経験の証明書、又は発行済の労働許可書です(同政令第1条5項b)。

(iv)技術者:就労予定の業務で1年以上学び、3年以上の勤務経歴を持つ者です(同政令第1条1項c)。必要な書類は、卒業証明書あるいは資格および企業が発行する経験の証明書です(同政令第1条5項b)。

Ⅳ.注意事項

(1) 政令70が公布と同時に施行されたため、本稿執筆時点(10月6日)では当局もその内容を十分理解できておらず、しばらくは申請手続きの混乱が予想されます。

(2) 同政令の公布以前に提出された申請書類を差し戻し、新たな規定の条件を充足させて、再提出を要求する地域も出ています。

文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)  

東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。

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