専門家コラム 2024年03月24日08:01

ベトナムビジネスの基礎知識(第45回)雇用契約終了時の注意事項(1)

今回より雇用契約書の終了時において、雇用者が注意すべき件について解説します。

ベトナムビジネスの基礎知識(第45回)雇用契約終了時の注意事項(1)

I. 清算の期限

・雇用者は、雇用契約終了日から14営業日以内に、被雇用者に退職時の手当の支払い、残存する有給休暇などの清算を行う義務があります(労働法第48条1項)。

・以下のような特別な場合には、清算の期限を延長できます(同上)。(ⅰ)個人ではない雇用者が活動を停止する(ⅱ)雇用者の経済的理由(ⅲ)企業の所有者の変更、企業形態の転換など(ⅳ)自然災害・伝染病の感染拡大中の期間。ただし、期間が30日を超えることは認められません(同法第48条1項)。

・期限内に十分な清算を実施しない、退職時の手当を支払わない雇用者に対しては、その違反した人数に応じて、100万~2,000万VNDの罰金が科されます(政令12/2022/ND-CP第12条2項)。この罰金額は個人に対する場合で、組織に対する際には額が2倍となります(同政令第6条1項)。

II. 退職時の手当

被雇用者の退職時に発生する可能性のある手当には、下記の二つがあります。2015年1月以降は、失業保険の加入対象となる組織が、それまでの10名以上の雇用者から、すべての雇用者に拡大されており(就職法第43条3項)、現時点ではこれらの手当が発生する事例は、かなり限られています。

①退職手当

(1)被雇用者の自己都合退職、雇用契約書の終了時などに発生する手当です(労働法第46条1項)。支給対象となるのは、12ヶ月以上勤務した被雇用者です[政令No.145/2020/ND-CP(政令145)第8条1項]。

(2)被雇用者が、通算12ヶ月以上失業保険に加入している場合、同保険基金から失業保険手当が支給されます。ですので、雇用者が十分に失業保険料を納付していれば、通常は退職手当を支払う必要は生じません(労働法第46条2項)。

(3)雇用者に退職手当の支払義務が発生するのは、以下のような事例に限られます。(ⅰ)失業保険制度の開始以前から雇用する被雇用者が在職する。(ⅱ)保険料の未納期間(例えば、産休期間中)がある。

(4)手当が発生する場合の額は、勤続12ヶ月以上の勤務につき、退職前直近6ヶ月の平均賃金の半月分となります(労働法第46条1、3項、政令145第8条5項)。

(5)この賃金に含まれるものは、基本給・役職手当・資格手当・外国語の能力など専門性の手当などを含まれますが、通勤費や食事手当などの扶助的な手当は含まれません(通達No.10/20/TT-BLDTBXH第12条3項)。

(6)算出対象の期間は、端数月が1ヶ月以上6ヶ月以下であった場合は半年に、6ヶ月を超える場合は1年に換算します。(政令145第8条3項c)。

②失業手当

(1)被雇用者が雇用者都合で退職する際に、雇用者が支払う一時金です。(労働法第47条1項)。

(2)退職手当と同様、失業保険に加入している期間は、雇用者ではなく失業保険基金から手当は支払われます(同法第47条2項)。会社都合による退職であっても、失業保険料を十分に納付している雇用者の場合には、法規上雇用者には負担義務はありません。

(3)手当が発生する際の額は、失業前の直近6ヶ月の雇用契約書の平均賃金に基づき、勤続1年につき1ヶ月分、最低でも2ヶ月分以上の賃金となります(同法第47条1、3項)。

(4)失業手当の金額の算出方法は、退職手当と同様です(政令145第8条)。

次回は社会保険手帳の返却など、具体的な手続きについて解説します。

文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)  

東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。

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