市場調査 2023年04月10日09:04

粉体塗装(その1)

粉体塗装技術は1950年代から世界に登場し、大きな進歩を遂げてきた。ベトナムでは、近年、粉体塗装技術が多くの生産分野で発展している。本稿では、この技術に関する基本知識、およびベトナム企業の現状と今後の発展の方向性について解説する。

粉体塗装(その1)

粉体塗装後の製品)

①粉体塗装技術の概要

粉体塗装の原理

粉体塗装は、静電法を用いて、材料(金属または非金属)の表面をプラスチック、着色剤、添加剤を含む塗料の層でコーティングする方法だ。負極(-)に帯電させた塗料の粒子で、正極(+)に帯電させた塗装対象の材料を覆うのである。

粉体塗装の工程

粉体塗装の用途

粉体塗装はプラスチック、木材、マイカなどの非金属材料に施すことができるが、最も一般的なのは、鋼、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属への塗装だ。昔からの水性塗装と比べてはるかにメリットが多い粉体塗料は、現在、次のようなさまざまな分野で使用されている。

・インテリア製品、装飾品

・屋外用建材:フェンス、ゲート、手すり

・工業製品:電気キャビネット、はしご型ラック、樋菅

・自動車、オートバイ、自転車向け製品

②粉体塗装を請け負っている北部企業の現状

現在、製品が消費者の手元に届く前に表面を保護するための塗装方法には、従来の水性塗装と粉体塗装の2つがある。製品の特性や顧客の要請による場合を含め、一部の小規模企業は依然として従来の水性塗装を行っているものの、ほとんどの製造企業では粉体塗装を採用している。特に、電気キャビネット、はしご型ラック、樋菅、鉄骨構造物、家電製品、自動車、オートバイなど、高い品質を必要とする分野などで使われている。ただし、投資コスト、塗装エリアの確保といったさまざまな理由から、粉体塗装の工程を省略している企業もある。

粉体塗装に投資する企業は2つのタイプに分かれる。1つ目は粉体塗装の専門企業で、主に、粉体塗装を必要とする顧客、工場、小規模企業のニーズを満たすことを目的としている。主要製品は手すり、ゲート、はしご型ラック、フェンスなど。粉体塗装の専門企業は少数で、会社規模や工場の面積は小さく、技術レベルは低い。2つ目は機械製品を製造する企業で、主に社内での製造のために粉体塗装システムを整備する。これらの企業は年間生産量の多い大企業だ。

筆者の調査によると、北部地域のほとんどの企業における粉体塗装システムは、半自動または手動によるものだ。つまり、ラインでは多くの工程が欠けていたり、省略されており、塗装の品質と生産性は依然として作業者のレベルとスキルに依存している。自動化された完全な粉体塗装システムを備えているのは、最新式の一貫システムに投資できる数少ない大企業に限られる。以下は、筆者が調査した北部の一部の省・市における企業の、粉体塗装の工程に関する評価と解説である。

表面洗浄工程

洗浄工程は、粉体塗装を含む塗装作業全般において非常に重要な工程である。しかし、多くの企業ではこの工程を省いたり、時代遅れの技術を用いて非常に粗雑に行っている。バリの研磨、錆層の洗浄、酸化などの作業が発生するが、ハンドグラインダーとワイヤーブラシのみを使用している企業が多い。一方、大企業では、金属表面を洗浄するためにショットブラストまたはサンドブラストを導入している。これは生産性と表面品質を考えると最適な洗浄方法であり、洗浄後の塗料の密着性が向上することで製品の寿命を延ばし、環境保護や労働者の健康保護につながる。ただし、製品のサイズや形状によっては投資コストが高くなる。強みや伝統、独自性のある製品を持たない小さな企業は投資しないことが多い。 Lilama Corporation、Lisemco、Song Da などの大企業でさえ、備えている設備は一貫システムではない。一部の企業は自動ショットブラストを導入しているが、依然として人の手で作業する企業もある。

サンドブラスト洗浄

金属表面の洗浄後、処理槽に入れて油脂やほこりを取り除く。処理槽は通常、錆洗浄酸槽、水槽、脱脂槽、化学薬品槽から成る。処理槽での洗浄は、脱脂→水洗→表面調整→リン酸塩処理→水洗の順となる。ただし、この工程は企業によってバラつきがあり統一されていない。処理槽がない、または処理槽が1~2槽しかない企業もある。製品の特性(サイズ、形状)、企業の規模、工業排水処理の問題も処理槽への投資に影響している。手すり、ゲート、大型鋼構造物などの製品には、大型の処理槽が必要だ。これは、伝統のある独自の製品を持たない小規模企業にとっては難しい課題である。

処理槽

乾燥工程

洗浄が終わると、金属表面を乾燥させる。乾燥方法は、赤外線乾燥、ガス乾燥、自然乾燥などがある。ガス乾燥は金属表面用ヒートガンを使用する方法(HTCO社が導入中)で、シンプルかつ効果が高い。製品はコンベアシステムに吊るされ、全自動で温度・速度が制御された乾燥炉を通過する。自然乾燥は、サイズの小さい薄い板金にのみ行われる。

各乾燥方法にはそれぞれメリットとデメリットがあるが、一部の企業では手作業で粗雑に行われている。これは、塗料の製品表面への密着性に影響を及ぼす。

(つづく)

文/Nguyen Hoang Hang NC Network Vietnam

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