専門家コラム 2023年12月18日19:46

製造業のプロが選ぶものづくりの本(第10回)強い現場をつくるトヨタの上司

人材教育に困っているベトナムの中小企業は少なくない。班長たちが優秀な作業者から昇進するのは日本と同じだが、昇進する前にリーダーシップ・マネジメントについて教育されていないのが日本と違う。

製造業のプロが選ぶものづくりの本(第10回)強い現場をつくるトヨタの上司

ものづくりは人づくり

ベトナムにある多くの海外企業でも教育制度が整っていないため、ベトナム人のリーダーは現場に発生した問題を解決することに日々悩んでいる。そこで今回は『強い現場をつくるトヨタの上司』を紹介する。本文の中から気になったポイントをチェックしよう。

お前たちがいいと思うならやってみろ!

トヨタ生産方式を打ち立てた大野耐一は、回答を与えるのではなく、現場に考えさせることを重視する。現場を見回る前に、いつも「あるべき姿」を思い描いていた。そして、実際の現場がその「あるすべき姿」とずれていると感じると、その現場の作業者を集め、どのように改善すべきか考えさせる。

現場が「こういうふうにしたいです」と報告すると「お前たちがいいと思うならやってみろ」とよく指導していた。さらに、そのアイデアにより予想を超える素晴らしい結果が出たら、褒める。これが大野耐一のリーダーの育て方である。

二つの知識と三つの技能

トヨタでは、リーダーに求められる能力を明確に決めている。それが「二つの知識と三つの技能」である。二つの知識とは「仕事の知識」と「職責の知識」、三つの技能とは「教える技能」「人を使う技能」「改善する技能」である。トヨタのリーダーは班長や組長になる前に、階層別研修で必ずこの能力を身につけねばならない。

発表させる、自信がつく、前に進む

トヨタには、小集団で改善活動を展開する「QCサークル活動」と、全従業員が現場の改善案を出す「創意くふう提案制度」がある。これらの制度が将来の現場リーダーを教育する仕組みとして機能してきた側面がある。

例えば、QCサークルのリーダーは正式な職制ではないが、ある集団を束ねるリーダーである。数人のメンバーを取りまとめ、全体を方向づけて、様々な問題解決を行い、目に見える成果を上げるのがリーダーの役割である。QCサークルのリーダーになることはリーダーシップ・マネジメントに求められる能力を身に付けるチャンスでもある。その後、自分たちがいろいろやってきたことを発表して、いい成績を上げて自信がつくのである。

以上はトヨタのリーダーの教育方法の一部である。参考になる点がまだ多くあるので、ぜひ本書を読んでみてほしい。

文/ブイ・リン

名古屋工業大学大学院卒業後、 (株)パロマに入社。生産ラインの改善、 生産ラインの立ち上げ ・ 管理、 品質管理等のさまざまな業務を経験し、 2021年9月、 ベトナムに帰国。 ベトナム製製品の品質向上を目指し、 中小製造業企業向けの 「日本式品質保証システム構築」 コンサルタントとして活動している。

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