今回はロストワックス、ロストフォーム、ダイカストについて紹介する。
ロストワックス・ロストフォーム
ベトナムでは主に日系、台湾系、ローカル企業がロストワックス、ロストフォームを行なっている。
日本ではロストフォームはFC、FCDがほとんどだが、ベトナムでは鋳鋼も多く利用されている。ただ、発泡スチロールの品質が悪く、塗型も自社で作っている鋳造工場も多いため不良が多いのが実情だ。
その一方、最近は発泡スチロールもPPS樹脂を使用し、通気度が高く強度のある塗型を使う鋳造工場も出てきており、「日本品質」に近づいてきている。
ロストワックスについては、ホーチミン市の台湾企業を中心に広く行われているが、最近は北部でも検討が始まっている。ワックスではなく3Dプリンターを使用し、小ロット品の鋳造を検討している企業もあるようだ。ロストワックスを行うローカル企業は、次のような意見を述べた。
「ローカル企業は主に台湾製、中国製の設備を使っているが、日本製中古機械を導入する企業もある。生産設備や現場管理に注力しているローカル企業も多くなってきたので、高品質のロストワックス製品の生産も実現できている。しかし、材料をほぼ輸入に頼っているので、価格面で中国製品と競合することが難しい」
ダイカスト
ベトナムでは家電生産やバイク産業の発展とともにダイカストを行う企業が大幅に増えた。零細企業から大企業まで様々な業者が稼働しており、台湾、日本などの外資が主流だ。
近年はダイカスト鋳造の分野に参入するベトナム企業も増加しつつあるが、競争力はまだ高くない。ベトナム企業が製造するダイカストの鋳物は質と量の両面で国内需要を満たせず、未だ外国企業に依存している。克服するには技術や人材のレベルアップが不可欠だ。
ダイカストを行うローカル企業は、次のような意見を述べた。
「ベトナムのダイカストの材料は主にアルミ(ADC6、ADC12等)、亜鉛(ZDC2、ZDC3等)、マグネシウムだ。主な用途はバイク、家電製品、電子製品など。自動車部品を作れる企業も数社あるが、日系、台湾系に集中している。生産設備は台湾製の新規設備と日本製の新規・中古品だ。ローカル企業のダイカスト部品の品質もどんどん向上しており、ティア1またはティア2として外資系メーカーに納品している企業もある。ベトナム製のダイカスト製品の値段が中国製品より高いのは、材料の輸入依存、国内インフラ(物流・環境処理等)の未発達、行政手続きの煩雑さ等が原因と言われている。例として、アルミ材については、中国から輸入する材料は低品質だが安価なため、品質要求の高くない製品なら中国製材料が採用されているようだ」
ダイカスト金型については、自社で製造するか、金型製作専門会社に依頼するケースが多い。ベトナム企業が製造する金型は品質が良いと評価され、外国企業にも利用される。またベトナム商工省は、地場企業の金型設計・製作能力を向上させるため、2020年からサムスンと協力して金型産業用人材育成プロジェクトを展開している。樹脂成形金型、パンチング金型を中心に教育する同プロジェクトにより、ベトナムのダイカスト金型製作の品質向上につながることが期待されている。
文 金森産業株式会社 高島毅/株式会社 NC ネットワークベトナム