市場調査 2022年10月07日10:38

鋳造産業(その1)

 ベトナムは鋳造が盛んな国だ。伝統的な装飾用銅製鋳物から生活・工業向けの鋳物まで多種多様にあり、数えきれないほどの鋳造工場が存在する。鋳造もベトナムの重要産業の1つと言われているが、実際はどのような状況なのか。今号より、その詳細を数回に分けて掲載していく。

鋳造産業(その1)

裾野産業の発展に貢献

 2012年2月13日に公布された「2009年から2020年にかけてのベトナムの鋳造産業の発展計画及び2025年までのビジョン」(商工省決定583/QD-BCT号)によると、鋳物は重要な製品であり、鋳造産業の成長はベトナムの裾野産業の発展につながり、貿易赤字の抑制にも貢献するという。

同決定によると、鋳造産業の生産価値は2020年までに約15億1,900万米ドルに、2025年までに約30億7,800万米ドルに達し、輸出価値は2020年に約1億5,200万米ドルに、2025年に約6億1,900万米ドルに達する見込みとなっている。

 ベトナムの鋳造産業はこれまで高品質かつ高精度の鋳物を生産するために近代的な技術への投資を続け、一定の発展を遂げてきた。一部のローカル企業が重工業向けの良質の鋳物を生産できるようになり、輸入依存も大幅に減少した。

 現在までにいくつかの重点的な投資プロジェクトも完了し、稼働を開始したため、鋳造産業は新しい活力を得て技術レベルも大幅に向上している。

 その一方、技術や生産規模の面において、ベトナムの鋳造産業は諸外国に比べ依然として遅れている。鋳造企業は主に小規模な市場の需要に対応しており、近代的な設備やテクノロジーに投資する企業はまだ少ない。こうした現状が、裾野産業の発展を妨げる原因となっている。

生産量No.1はハイフォン市

 鋳造生産はハイフォン(Hai Phong)、ハノイ(Ha Noi)、ビンフック (Vinh Phuc)、ドンナイ(Dong Nai)、タイグエン(Thai Nguyen)、ナムディン(Nam Dinh)、ホーチミン市(Ho Chi Minh City)、フンイェン (Hung Yen)、ハイズオン(Hai Duong)の9つの地方に集中している。

 これらの9つの省・市の鋳物生産量は全国の約90%を占める。鋳物生産量が最も多いは、トゥイグエン工業団地があるハイフォン市だ。同工業団地には年間最大5万トンの生産能力をもつ遠心パイプ鋳造工場「タンロン鋳造工場」をはじめ、生産規模の大きい鋳造施設が多く集中している。

 ハノイには、トランフンダオ (Tran Hung Dao)工場、ハメコ(HAMECO)第一機械工場など政府が投資している株式会社がある。他にもアルミニウム圧力鋳造を行う外国メーカーの工場も多く、日系ではHAL、VPIC、VAPなどの工場がある。また、ビンフック省には年間最大3万トンのアルミニウム圧力鋳物生産量を持つホンダの拠点がある。

 鋳造に使われる4つの主な材料は、鋳鉄及び鋼、アルミニウム合金、銅合金である。鋳鉄・鋼の鋳物は主に配管、マンホールの蓋、電柱などの公共インフラ建設に使われ、一部は研削ボール、パッドなどのセメント産業向け製品の製造に使われる。アルミニウム合金の鋳物は自動車・バイク産業に提供されている。銅合金の鋳物は主に工芸品などを製造する鋳造村で使用されている。鋳造村は零細企業で技術レベルは低く、主に生活用品を作っている。

鋳造の用途は多種多様

 鋳造を用途別に分けると、詳細は以下のような状況だ。

 製造業用:ベトナムの製造業にはバイク・自動車の製造、農業機械の製造という2つの主要分野がある。そのため製造業向けの鋳物製造はこの2分野のニーズに集約される。ベトナムの製造業の規模はまだ小さく、外資系企業に大きく依存している。特にアルミダイカストについては、地場企業の参加はまだ少ない。

 補修・メンテナンス用:補修や交換用鋳造部品の割合は非常に小さく、わずか2%である。これはローカルの鋳造企業にとって将来性のある分野だが、ローカル企業は輸入鋳物との競争において多くの困難に直面している。理由はローカル企業の技術レベルが低く、近代的な設備に投資できる企業が少ないからだ。

 輸出用:鋳物を輸出するには、海外市場の高品質要件を満たす必要がある。そのため企業は最新テクノロジーに多額の投資をして、製品の品質及び生産能力を向上させ、合理的で競争力のある価格を実現せねばならない。現状、欧米や日本に輸出しているローカル企業はまだ少ない。

 公共インフラ用:都市化の進むベトナムでは公共インフラ開発向けの鋳物のニーズは高く、将来成長していくと思われる。こうした鋳物は高度な技術を必要としないため、多くの鋳造企業がこの市場に参入できる。ただし、低価格であるが故に価格競争が激しくなる可能性が高い。公共インフラ向けの鋳物は利益が低い製品であり、高度な技術投資を埋め合わせるのは難しいと思われる。

 鋳造村の工芸品等用:鋳造村に提供する鋳物の割合はかなり大きい(22%)。Dai Bai(バクニン省)、Long Thuong(フンイェン省)、Phuong Duc、Thuy Xuan(フエ省)、Phuoc Kieu(クアンナム省)、Tra Dong(タインホア省)、My Dong(ハイフォン省)、Y Yen(ナムディン省)といった地方は長い歴史を持つ鋳造村として知られている。

 セメント産業用:これはかなり安定した市場であり、長期的には増加傾向になると予想されている。ただし、セメント工場と契約を結ぶのは容易ではない。

 ベトナムの鋳造産業は、技術やマネジメント面が未発達で課題は多いが、世界のサプライチェーンへの参入を果たした地場企業も存在するなど、その将来性は注目に値する。またここ数年、先進国が環境問題で鋳造の量産を制限したり、中国依存を減らしたりしたことを背景に、ベトナムへの鋳造分野の進出や調達案件が順調に増えている。

 次回は鋳造の種類について、さらに詳しく解説する。

 文 株式会社NCネットワークベトナム Nguyen Thu Phuong/Nguyen Hoang Giang

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