ベトナムは世界の主要なゴム生産国の1つであり、2018年のゴム生産量は前年比3.9%増の114万2千トンだった。単位面積当たりの収穫量も、新しい品種のゴムノキの導入や栽培技術の進歩により大幅に増加した。ここ数年は年間1.6~1.7トンを維持し、アジアで最も高い収穫量を誇る国の1つとなっている。
アジアで最も高い収穫量
2011年から2018年にかけて、ゴムノキの栽培面積は80万1,600ヘクタール(以下ha)から96万5,400haに増加した。特に南東部は伝統的な栽培地域であり、国内最大の栽培面積をもつ。南東部における2017年のゴムノキ栽培の総面積は54万8,864haで、国内全体の約56.6%を占めた。
南東部のゴムノキ栽培は各省に広がっている。それぞれの面積は、ビンフォック(Binh Phuoc)省が23万7,568ha、ビンズオン(Binh Duong)省が13万3,998ha、タイニン(Tay Ninh)省が10万437ha、ドンナイ(Dong Nai)省5万1,272ha、バリア・ブンタウ(Ba Ria-Vung Tau)省が2万1,725ha、ホーチミン市が3,733ha。
次に、中央高地の栽培面積は24万9,014haで、国内全体の26%を占めた(2017年)。そのうちコントゥム (Kon Tum)省が7万4,756ha、ザライ(Gia Lai)省が10万356ha、ダクラク(Dak Lak)省が3万8,381ha、ダクノン (Dak Nong)省が2万6,348ha、ラムドン(Lam Dong)省が9,173ha。
主要製品は高品質タイヤ
ゴムの製造加工を行っているのは主に国有企業で、そのほとんどはベトナムゴム産業グループ(VRG)傘下の企業および小規模家庭だ(面積は全体の約51%)。
ベトナムで生産できるゴムの種類はかなり多様である。その中でもSVR3Lが最も多く、約50%を占める。しかし、SVR3Lの需要はあまり高くない。一方、自動車タイヤの製造に使用され、世界で最も消費されているSVR10およびSVR20は、ベトナムのゴム生産量の15~18.7%にすぎない。したがって、ゴム製品の構造を調整することが、今後のゴム産業にとって重要な課題となる。
ベトナムのゴム産業の主要製品はタイヤだ。国内の大手製造企業はカスミナタイヤ、ダナンゴムタイヤ、サオバンゴムタイヤなど、外国企業はサイレン(中国)やクムホ(韓国)などがある。国内で生産されるタイヤは種類が豊富で品質も良く、約130ヵ国に輸出されている。
従来はラジアルタイヤを製造するために、ベトナムのゴム工場はタイ、マレーシア、インドネシアなどからSMR10および20の天然ゴムを高価格で輸入する必要があった。国内ではまだ生産できなかったからだ。ところが最近になって、ニャットベト社のエンジニアチームが、自動車用ラジアルタイヤの製造に適したSVR10の加工技術の研究に成功した。SVR10で製造されるタイヤは、カスミナ社で日本のJIS D4230規格に沿ってチェックされる。これはSMR10で製造されるタイヤよりも優れている。
ゴム輸出量は増加傾向
タイヤ以外にも、ゴム部品、ゴム靴底、ゴム手袋、ゴム衣類、ゴムチューブなども製造・輸出している。
2018年のゴム輸出量は前年比13.3%増の156万トンに達した。しかし金額ベースでは前年比7%減の20.9億米ドルにとどまった。輸出量が増えたにもかかわらず輸出額が減少したのは、輸出単価が平均で約20%下落したため。
2019年のゴム輸出量は170万トン(23億米ドル)だった。主な輸出先は中国、インド、韓国だ。そのうち中国への輸出量が全体の67.5%、金額ベースで全体の66.5%を占めた。2019年1~11月の中国へのゴム輸出量は101万トン(13.5億米ドル)に達し、量も金額も前年同期より約10%増加した。
そのうち合成ゴムの輸出量は前年同期比5.8%増の67万トン、金額ベースでも5%増の9億725万米ドルに達した(ゴム総輸出量の51.3%)。
2019年の最初の10ヶ月で、SVR20の輸出は前年同期比151.8%増、SVRCV40は66.9%増、RSS1は47.6%増、ラテックスは30.9%増、SVR 3Lは17.8%増となった。逆に、再生ゴムは37.4%減、スキムブロックゴムは65.2%減、CSR 10は81.5%減となった。
合成ゴム等は輸入依存
ベトナムでは現在、天然ゴム以外のゴム原材料やシリコーン材料はすべて輸入に依存している。主な輸入先は韓国、日本、中国、タイなど。ベトナムに進出している日系ゴム会社のほとんどは日本やタイ、その他の海外から材料を持ち込んでゴム製品を生産しているようだ。
自動車、バイク、家電向けのゴム部品を製造するローカル企業3社を調査したところ、一部は地場商社より購入しているが、大半はヨーロッパ、アメリカ、中国から輸入していた。あるローカル企業は、台湾企業のH&Gグループがベトナムで合成ゴムを製造していると回答したが、この会社の詳しい情報は得られなかった。
ベトナムではシリコーン材料も製造していない。統計データはないが、シリコーンを使用している日系の試作メーカーに聞くと、日本、中国、ドイツ製のシリコーンをベトナム国内の商社から購入しているという。
課題の克服が不可欠
ベトナムのゴム輸出市場は、自由貿易協定が追い風となりますます拡大している。例えば、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)を通じてベトナムは、チリやブルネイ、ニュージーランドやオーストラリアのようなゴム産業が未発達の国々にゴムを輸出できるかもしれない。輸出市場が多様化すれば、中国への依存度を下げることも期待できる。
国内および世界のゴム需要は増加しているため、ベトナムのゴム産業が発展する機会はたくさんある。ただし、そうした機会をつかむためには、国内のゴム生産企業は品質を絶えず改善したり、技術レベルを上げたり、製造業のニーズに的確に対応したりと、多くの課題を克服する必要がある。
また前述したように、ベトナムは合成ゴムが製造できず、輸入に依存している状態だ。優遇輸入税(MFN税率)は現在、天然ゴム原材料はすべて3%、合成ゴム原材料はほとんどが0%(SBR、XSBR、BR、 IIR、CIIR、BIIR、CR、NBR、IR、EPDM)。国内製造が未発達で輸入税率も低いことから、ベトナムの合成ゴム調達は今後も輸入依存が続くと考えられる。
文 株式会社NCネットワークベトナム Nguyen Thu Phuong/Nguyen Hoang Giang