お悩み:ホーチミンシティで住んでいる留学生です。先日、ビンズン(Bình Dương)省に住んでいるベトナム人の友達に会いに行ってきました。そのときに使ったのが路線バス。エミダス博士に私の体験談を聞いてもらいたくてお便りしました。(某大学ベトナム語科3年生・男子)

バスターミナルの名前が2つ
ホーチミンシティの中心部からビンズン省の中心都市・トゥーヤウモット(Thủ Dầu Một)までは約30キロ。バイクで行ってもいいですが少々距離があります。バスだと楽ですよね。
──それに隣の省までバスで行くのは「旅行」気分が味わえそうじゃないですか。下調べの段階からワクワクしていました。
そうですね、市内を走るバスと、郊外まで行く中距離バス、それからダナンやハノイに行く長距離バスだと、雰囲気が違いますね。
──ビンズン省で会う予定の友人に「バスで行くつもり」とZALOで伝えたところ、「じゃあ、トゥーヤウモット・バスターミナル(Bến xe Thủ Dầu Một)まで車で迎えに行くわ」と言う答が返って来ました。ところが私がGoogleマップで調べて出てきたバスターミナルは、ビンズン・バスターミナル(Bến xe Bình Dương)なんです。
トゥーヤウモットは都市名で、ビンズンは省名(日本の「県」に相当)ですから、日本だったら「神戸バスターミナル」と「兵庫バスターミナル」の2つがあった、みたいな感じですね。
──はい。これは簡単に解決しました。友人に尋ねると「同じ」。どちらでも通じるようですが、後者が正式名称でした。
バスアプリを使えば安心
──次に「ビンズン行きのバスは、どこで乗ればいいのか」です。これに関しては、スマホのアプリで調べました。検索するといろんなアプリが出てくるのですが、私が使ったのは次の2つです。
BusMap - Xe buýt & Thanh Toán
https://busmap.vn/
Go!Bus TPHCM
https://gobus.vn/
私がホーチミンシティに住み始めた2000年頃は、ベンタン市場前のバスターミナルに、紙の路線図が置いてあって、それをもらいに行ったものです。便利になりましたね。
──紙の路線図も見てみたいが気がしますが、便利さではアプリですよね。前者のアプリは、ベトナム語、英語だけではなく、何と日本語にも対応していました。後者はベトナム語と英語のみ。共に、声調記号がないベトナム語を入れても、ちゃんと対応してくれます。ミエンドンバスターミナルは「Bến xe Miền Đông」ですが、これを「Ben xe Mien Dong」と入力しても大丈夫なのです。
結局、どちらのアプリを使ったんですか。
──今回は主に後者を使いました。使い方は簡単で、目的地と現在地を入れると、そこを結ぶバスの番号、途中の停留所のリストと経路の地図、移動距離、運賃、そして時刻表が表示されます。複数の候補があれば、それも出てきます。例えば「A地点からB地点までは、1番のバスに乗り、B地点で2番のバスに乗り換えるとC地点に行けます」というような感じで、経路の詳細が分かるので比較検討が可能です。
Googleマップとの比較
Googleマップを使えば、同等の情報が出てくると思うんですが。
──もちろんGoogleマップも使いました。バスの経路だけでなくバス停までの道順や、バス停を降りてからの道順も教えてくれますから、バスアプリより便利です。
それでもバスアプリを使った理由はなぜ?
──私が使った範囲では、バスの情報の正確性に関してはアプリのほうが上だったからです。実は、Googleマップで、出発地に「ミエンドンバスターミナル」を、目的地に「ビンズンバスターミナル」を入力したのに、「Ngã Năm Liệt Sĩまで徒歩で移動して(約6分)、61−8号のバスに乗る」という案内が出てきたんです。そこで前日の夜、下見に行きました。ところがNgã Năm Liệt Sĩにあるバス停の行き先表示板を見ても、61−8号のバスが書かれていません。結局、ミエンドン・バスターミナルから乗車しました。
ちょっと面倒ですが、Googleマップとバスアプリの併用が良さそうですね。
中北部方面はミエンドンへ
ベトナムの中・長距離バスが発着するバスターミナルは市内に複数ありますから、迷いませんでしたか。
──それは周囲の日本人の知人からも聞いていましたし、大丈夫でした。
主に使うのは次の2つでしょうね。
ミエンドン・バスターミナル(Bến xe Miền Đông)主に中部・北部方面行き
ミエンタイ・バスターミナル(Bến Xe Miền Tây)主にメコンデルタ方面行き
──ひとつ気になったのが、ミエンドン・バスターミナルは新しいバスターミナルが出来ていて、一部の路線はそちらからの発着になる、という情報です。しかしビンズン行きは旧来のターミナルでした。
結局、どのバスに乗られたんですか。
──61−8というバスです。ミエンドン・バスターミナルが始発でビンズン・バスターミナルが終点。所要時間は1時間少々で、運賃は3万ドンでした。車内はエアコンが効いていてなかなか快適。乗車時に、運転手さんが「どこまで行くの?」と聞いてきて、降車地を伝えると運賃を教えてくれます。前払いで、感熱紙に印字した切符兼領収書を渡してくれました。帰りも同じバスです。
ターミナルの中で迷ってしまった
──ただ乗車前にはちょっとした「事件」がありました。
と言いますと?
──バスターミナルの建物に入ると、切符を売るブースがたくさん並んでいるのですが、行き先表示板に書かれているのは、ハノイとかダラットとか長距離路線ばかりです。
中距離路線は扱いが別なんですよね。
──バスターミナルの建物を入ったところには「information」と英語で書かれた立派なカウンターがありましたが無人。手近な窓口の人に「ビンズン行きのバスは、どこから出ていますか」と尋ねました。正確に言うと、発音に自信がないので、Bến xe Bình Dươngと書いた紙を見せただけなんですが。教えてもらった場所は、長距離バスが並んでいるバス溜まりとは反対側、道路から見て建物の手前です。そこに行くと確かに「61-8 Bến xe Miền Đông(ミエンドン・バスターミナル) - Thủ Dầu Một(トゥーヤウモット)」という看板がありました。
ここでも目的地の表示はBến xe Bình DươngではなくThủ Dầu Mộtだったんですね。
──そうなんです。事前に友人に確認していなかったら、ちょっと不安になったかも。ベンチに座っていると、売店のおばさん、それから飲み物を買いに来たタクシーの運転手さんが話しかけてきました。私がビンズンに行くのだと答えると「ここで待っていたらバスが来るよ」と教えてくれたので一安心です。
バスが予定より早く出発!
──ところがです。お2人と談笑していると、ふと、運転手さんが私の後ろを指差し、
「今、通り過ぎたのは、キミが乗るバスじゃないか」
見ると、バスの車体の後ろの電光掲示板には、確かに「61−8」と書かれています。ベンチに座って待っている客がいるのに、バスは止まってくれなかったのです。私は慌ててバックパックをつかむと、バスを走って追いかけ、ターミナルの出口のところで一時停止していたバスに追いつきました。入口のドアをノックすると、運転手さんがドアを開けてくれ無事乗車です。
「バス停で止まらないバス」というのは、一昔前の路線バスではよくあることでした。手を振って「乗りたい」という意思表示をしないと止まってくれないんですよ。それどころか、手を振っても速度を落としてドアを開けてくれるだけで、バスと並走して走りながら飛び乗る、ということもありましたよ。
──そうなんですか。バスに乗車してから時刻を確認したのですが、バスの発車予定時刻前なんですよ。早めに行って正解でした。
ビンズンは日帰りバス旅行にオススメ
振り返ってみてバス旅行はどうでしたか。
──短期旅行者の方にはちょっと難しいかもしれませんが、在住者の方なら楽しめると思いますよ。ベトナム語ができなくても、アプリを使えば何とかなりますし。
ビンズンでは何をされたんですか。
──迎えに来てくれた友人が運転する車で、日本の東急が開発を進めている新都市を訪ねたんですが、いや、驚きました。街の中はきれいだし、大きなイオンモールがあるし、まるで別の国みたいです。日系のお店もたくさんあって、日本人にとっても住みやすそうな街だなという印象を持ちました。
ところで個人的な質問ですが、ビンズン省にお住まいのお友達は女性ですか?
──は、はい。今、お付き合いをしている彼女なんです。
おあとがよろしいようで。
【エミダス博士】 ベトナム生活に関する雑学博士。 長年のベトナム暮らしで得た知識を元に、当地で暮らす方々が直面する様々な質問にお答えします。 難問・奇問、大歓迎。 知りたいことがあれば、 emidas-m@nc-net.vn まで。