ベトナムは物件の貸し手の権利が強すぎる、というベトナムあるあるなお話ですが。たとえば一等地の物件が年々高騰し、家賃が一か月数百万円になっているところもあり、飲食店などが相次いで撤退。その後誰も借りぬままずっと空いているにも関わらず「値段を下げるぐらいなら誰も借りなくて良い」という強気のオーナーも少なくないようです。

ある物件を借りたベトナム人女性が、ルームシェアするために自分でリフォーム、ルームメイトが見つかったタイミングで、急にオーナーから「出て行ってくれ」と言われたというニュースがありました。物件が高値で売れ、借主に「違約金」を払ってでもまだ利益があるからという、義理も人情もない話です。
また人気の日本人経営のレストランがオープンして一年も経たないうちに「出て行ってくれ」と言われやむなく閉店。あろうことかその後、明け渡した店舗で看板もそのまま、居抜きで別の飲食店を始めた、というニュースが話題になっていました。詳しい事情も正確な理由も分かりませんが、こういうことがごく普通にまかり通るのです。
そして当店が直接物件を借りていたベトナム企業が昨年11月末に退室。その企業がビルを一棟借りしていたため、オーナーが一棟借りをする借主を探したところ、幸いにもすぐに見つかりました。しかし安堵したのも束の間。9月末、まさかの「白紙状態」に。借主がハノイで事業を展開するということで辞退されたのでした。そして「一階だけ貸すことはできない。出て行くか、一棟借りしてくれ」と言われました。相手の都合はおかまいなし、当店にとって不利な二択しかありません。そこで賃貸事業も行えるよう会社を設立し、借主を探しました。一棟借りは家賃を当社で定めることができ管理もしやすいというメリットがありますが、もし借り手が見つからなければ一棟丸々の家賃を毎月負担しなくてはなりません。
一方、他の物件への移転も検討してみました。そこで初めて気が付いたのですが、多くの物件が一棟借りをしており、飲食店の場合一階、二階をカウンターや個室利用し、上階は運用が決まっていない、あるいは別の誰かに貸してバーなどになっているというパターンが多いのです。
当店は静かな住宅街の中にあって、グエンフーカンにすぐ出られる路地と裏ファンビッチャンに面しているという絶好のロケーションであるため、短期間ではそれと同等以上の好条件の物件を見つけることはできませんでした。また2020年12月のオープン時、Googleマップの表示が間違っており、Grabもデリバリーもウチの住所を見つけることができず、その対応が大変なストレスでした。そして吸収合併した角打ち【日本酒で乾杯!】の情報を上書きされてしまい地図上から消滅。その問題解決に奔走し、正しく認知されるまで2年掛かりました。そんな苦労もあって、おいそれと移転する気にはなれませんでした。
そうこうするうちに一棟借りする日系企業が見つかり、ひとまず安心。
こんな不条理をビジネスチャンスと捉えた不動産会社が、周辺の一棟貸し希望の物件をあちらこちら借り取って、一室だけ借りたい借主に貸すという、至極真っ当な動きが始まっていると耳にしています。