国際協力機構JICAは、ベトナムをはじめとする多くの開発途上国において、産業振興や人材育成を目的とした技術支援を行っています。JICAの技術移転プロジェクトは、単なる資金援助に留まらず、持続可能な発展を可能にするための人的リソースや管理能力の育成にも重点を置いており、これまでに多くの国で成功を収めてきました。ベトナムにおいても、工業化の進展と産業発展に大きく貢献しています。

VJCCは日越両政府の合意のもと、貿易大学の組織のひとつとして2000年に設立され、日本とベトナムの教育・文化・ビジネス交流を促進する重要な機関です。日本政府が東南アジアおよび中央アジアの国々に市場経済化促進のために設立した9か国10センターのひとつで、建物は日本政府の無償資金協力で建設され、JICAの技術協力が実施されています。設立以来、VJCCは多くの教育プログラムやビジネスセミナーを通じて、両国間の理解と協力を深めるための橋渡しの役割を果たしています。
特に、VJCCの中核的なプログラムである「経営塾 (KEIEIJUKU)」は、ベトナム企業のリーダーシップ育成と日本企業とのビジネスパートナーシップの強化を目的としています。この経営塾は、設立から本年で15年を迎え、1,000名以上、700社以上の企業の人材育成に貢献してきました。経営塾を通じて、現地の企業が国際競争力を高め、日本企業との協力体制を構築する重要な機会を提供しています。
KEIEIJUKUに並行して、VJCCは中間管理職や現場担当者向けに、多様なニーズに応じた他の研修プログラムも展開しています。これにより、企業は経営革新や改善をより円滑に実施し、経営層から現場レベルまで日本式の管理手法を一貫して導入することが可能になります。管理職と現場の双方が共通の理解を持つことで、企業はより効率的で持続可能な成長を遂げ、日本企業との協業においてもスムーズなコミュニケーションと運営が実現されています。同じ時期に学んだ塾生の和と絆は、経営塾の同窓会組織である経営塾クラブというコミュニティにつながり、相互互恵を進展させ、個々の会社を成長させるエンジンとなります。VJCCの強みは、人材育成に留まらず、ビジネスマッチング、そして経営塾コミュニティという三位一体でのベトナム企業への支援にあると言えるでしょう。
近年、VJCCは多様な業界にわたる企業を支援し、日越間のビジネス交流を一層深める新しいイニシアティブを推進しています。特に、KEIEIJUKUの企業は、NCネットワークが主催する「FBC (Factory Network Business Conference)」展示会に積極的に参加しており、これまでに数多くのビジネスマッチングやパートナーシップを形成しています。2024年10月18日から3日間にわたって開催された「FBC ASEANものづくりビジネスコンフェレンス」には、経営塾企業18社が参加し、互いのブースを訪問し合い、これまでの努力と業績を称え、さらなる成長を鼓舞する姿が見られました。企業は自社の製品やサービスをアピールすると同時に、日本の企業から最新の技術やノウハウを学び、ベトナム市場における競争力を一層強化しています。このような場を活用することで、KEIEIJUKUの卒業企業は日本企業との関係を深め、具体的なビジネス成果を上げています。
企業経営者および人材の育成は短期間で成し遂げられるものではなく、時間と労力をかけた長期的かつ粘り強い取り組みが求められます。特に、グローバルなビジネス環境で成功するためには、企業が国際市場の要件に対応できる能力を持つことが必要不可欠です。KEIEIJUKUプログラムを通じて、ベトナム企業はこれらの能力を徐々に構築し、長期的な成長を見据えたビジネスモデルを確立しています。このような包括的な人材育成は、企業が国際基準に適合し、グローバル市場での競争力を確保するための基盤を形成します。JICAの技術支援とVJCCの取り組みにより、ベトナム企業はこれからも成長を続け、国際的なビジネス環境に適応していくことが期待されます。
VJCC-KEIEIJUKUコースについて
VJCCの経営塾では、日本式の経営をベトナムの企業の経営者に伝授しています。プログラムでは、日本人講師が経営戦略、人材管理、日本式ものづくりなどを教え、ベトナム人講師が財務管理やマーケティングを担当しています。コースは10か月間で、受講生は月に5日間、VJCCに集まり講義と議論を行います。
毎年、ハノイで2コース、ホーチミンとハイフォンで各1コースを開講しており、各コースの定員は30名です。これにより、年間120名の企業経営者が育成されていることになります。受講生からは、「経営が何であるか初めて理解できた」「会社の経営理念を人間中心に見直した」「社会との共生なしには会社の成長はないと実感した」「海外でMBAを取得したが、経営塾の学びは実践的に会社に応用できた」という声が寄せられています。
コースの終盤では、日本研修が10日間行われ、本邦企業の訪問や工場見学を通じて、これまでの学びを総括します。また、ビジネス交流会を通じて日本企業とのビジネスマッチングが実施されており、毎年多くの商談が成立しています。2023年には30件以上の契約が結びつきました。受講生は月に1回の講義に参加するだけでなく、経営者としての課題や悩みを同期の受講生と共有し、相談し合います。さらに、自主的に勉強会を開催し、自身の会社の経営改善や改革に取り組む姿勢が見られることも、経営塾の大きな特徴です。