ドイツが国を挙げてICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した新たなモノづくり革新プロジェクトとして推進する「インダストリー4.0」が提唱されて以降、世界中の製造業でスマートファクトリー化への取組が加速している。デジタル化や自動化をはじめとするスマートファクトリー化への投資は活発であり、今後はさらに加速すると見られている。
3次元CADデータによるものづくりと測定
スマートファクトリーは、IoTを活用して工場内のあらゆる機械装置や工場内の作業者に取付けたセンサーなどからデータを収集し、このデータを分析・活用することで新たな価値を生み出し、生産性の向上や品質の安定を実現することを目指した工場である。当社三次元測定機も、モノづくり現場で加工寸法や形状が設計値通りに加工されているかどうかを高精度に測定する装置であり、加工工程の状態や加工条件が適切かどうかをセンシングするセンサーとしての役割を担う。
今回は、IT(Information Technology:情報技術)、ICTを活用した当社三次元測定機における生産性の向上やシステム連携等の取組について紹介する。
ミツトヨのIoT対応方針
IoTを活用したスマートファクトリーに対するミツトヨの対応方針を表現したのが『M3 Innovation』である。これからのものづくりにとって重要と考える3つのキーワードであるMeasure(測る・計る)、M2M(Machine to Machine/つながる)、Manage(データ管理、測定機を管理する)の頭文字の3つのMをとって、エムキューブイノベーションと表現しでおり、ミツトヨは、『3つの【M】を通じて「ものづくり」にIoTを活用したInnovationを提案する』というコンセプトである。
1. Measure(測る・計る)
製造ラインの製品を抜き取り、検査室に移動する従来のオフライン検査は、その手間などが製造工程の効率化を図るうえで課題のひとつとなっている。そこでミツトヨは、高速、高精度、温度保証範囲の拡大、省スペース、エアレスなど、インラインやラインサイドで検査するための技術の結集により、生産ラインの専用ゲージ検査に置き換わる新しい測定のカタチを提案していく。
ショップフロア型CNC三次元測定機 MiSTAR555
2. M2M(つながる)
機器同士が通信、ネットワークを通じて情報を交換・共有し、高度な処理や制御を実行するのがM2M(machine to machine)の概念である。近年の工作機械では、様々な通信規格に対応しており、異なるメーカーであっても同一のネットワーク上で通信が可能となってきている。三次元測定機システムが、工作機械などの加工装置と同じネットワークに接続・連携するには、工作機械と同じインターフェースや通信規格への対応が必要となる。ミツトヨでは、製造工程におけるあらゆる機器と測定機器がつながるネットワーク構築(工作機械で利用されているインターフェースや通信規格への対応等)を進めている。
3. Manage(データ管理、測定機を管理する)
Manageは、測定データや測定機器を管理することを意味している。ネットワークにより製造工程の情報を一元管理するシステムを構築し、測定データや測定機器の情報をデジタル化することによる「見える化」や、加工精度の維持、生産性向上、保守管理の向上に貢献する。当社のSMS(Smart Measuring System)対象の測定機器は、工作機械では標準的なMTConnect通信規格に対応している。装置の稼働状態をリアルタイムに出力する機能を持つシステムで、工作機械やロボットと同一のシステムで稼働状態の見える化や分析が可能となる。加工精度・加工品質の管理面では、統計的工程管理手法による測定データの「見える化」により不良品発生を予測することが可能となる。
当社では、マイクロメータやノギスなどの測定工具から三次元測定機までの測定データをデジタル化することが可能で、MeasurLinkで寸法計測データを一元管理することが可能である。
4. CADデータの活用と連携
当社のMiCAT Planner(三次元測定機用オフライン測定プログラム生成ソフトウェア)では、ある条件下において完全全自動で三次元測定機用の測定プログラムの生成が可能である。MiCA TPlannerは、測定プログラム作成時間の大幅短縮(最大95%の低減:当社比)、最適な測定経路生成、強力な干渉チェックと自動迂回、オフラインのため測定機の稼働率に影響を与えないなどの特徴が挙げられる。
通常の測定プログラムは、三次元測定機を使って操作者が測定手順をプログラミングするため、操作者の違いによる品質、測定時間のばらつきが生じる。MiCAT Plannerでは、3D CADデータから予め決められたルールで測定プログラムを自動生成するため、操作者の技量に左右されない均一品質を得ることができる。また、生成される測定プログラムは、衝突しない経路と最適経路の両方を考慮して生成されるため、安全で測定時間の短い測定プログラムが自動生成できる。MiCAT Plannerの活用により、測定プログラム生成に関わる技術継承の課題も解決できる。
三次元測定機用自動測定プログラム生成ソフトウェアMiCAT Planner
測定プログラム作成時間の比較
精密測定で社会に貢献する
ミツトヨは日本国内はもとより海外の現地法人にも校正部門を持ち、信頼性の高い校正サービスを提供している。また、ミツトヨのショールームは商品展示や専任エンジニアによる実演・実技指導のほか、システム導入にあたって顧客に最適なソリューションの提案が可能である。ミツトヨは、「精密測定で社会に貢献する」という経営理念のもと、企業の未来にプラスの価値をもたらす。