労働法に関わる罰則規定で、22年1月17日に公布・施行された政令12/2022/ND-CP(政令12)に関してです。今回も旧罰則規定であったNo.28/2020/ND-CP(政令28)よりも罰則が強化されている内容に関してです。
2.その他の内容
(3)労働規律違反処分を実施する代わりに、罰金あるいは賃金カットを行った場合には、2,000万~4,000万VNDの罰金が科されます(政令12第19条3項b)。政令28での罰金額は1,000万~1,500万VNDでした(政令28第18条3項b)。
(4)被雇用者の労働規律違反において、就業規則に規定のない罰則、雇用契約書で合意のない内容、労働法に記載のない規定で処分を実施した場合には、2,000万~4,000万VNDの罰金が科されます(政令12第19条3項c)。政令28での罰金額は1,000万~1,500万VNDでした(同政令第18条3項c)。
(5)生理期間中の女性の被雇用者に、30分の休暇を与えない場合には、1,000万~2,000万VNDの罰金が科されます(政令12第28条2項d)。政令28における罰金額は、50万~100万VNDでしたので(同政令第27条1項b)、金額が20倍に引き上げられています。
(6)未成年の被雇用者(注:労働法第143条1項に基づき、18歳未満で就労する者)を規定の労働時間を超えて就労させた場合(注:一般的な時間外労働の事)には、2,000万~2,500万VNDの罰金が科されます(同政令第29条2条c)。政令28での罰金額は、1,000万~1,500万VNDでした(同政令第28条2項b)。
(7)15歳未満の者を時間外労働、夜間労働させた場合には、2,000万~2,500万VNDの罰金が科されます(政令12第29条2条d)。政令28での罰金額は、1,000万~1,500万VNDでした(同政令28第28条2項c)。なお、夜間労働とは、22時から翌日6時までの時間帯における勤務です(労働法第106条)。日系企業で15歳未満の者を雇用している事例は、ほとんどないものと考えますが、満13歳以上15歳未満の者の可能な業務は、労働傷病兵社会事業大臣の決定した軽度の業務に限定されます(同法第143条3項)。
(8)被雇用者が規定に基づく失業保険給付の申請を完了するために、雇用者が被雇用者の失業保険料の支払い確認の手続きを実行しない場合、被雇用者一人当たり100万~300万VNDの罰金となりますが、罰金の上限額は7,500万VNDです(政令12第39条3項)。政令28での罰金額は、違反1件当たり50万~100万VNDでした(政令28第38条2項b)。確認の手続きとは、被雇用者が退職する際に、雇用者が社会保険納付期間の確定手続きを行った上で、社会保険手帳に記載のある社会保険・失業保険加入期間を社会保険局によって確定してもらう事です。社会保険手帳は、被雇用者が自身で管理する事が法規上定められていますが(社会保険法No.58/2014/QH13第18条2項)、実際上は雇用者が管理している場合も少なくないと考えます。
(9)社会保険および失業保険の給付を受けるために、その書類の内容を偽造・改ざんを行ったが、刑法で訴追される範囲外の場合には、違反一件当たり1,000万~2,000万VNDの罰金となり、罰金の上限額は7,500万VND(政令12第40条2項)。政令28での罰金額は、違反一件当たり500万~1,000万VNDでしたが(同政令第39条2項)、罰金額の上限規定はありませんでした。
次回からは、従来からある罰則規定の中で、実務上注意が必要なものについて解説します。
文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)
東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。