専門家コラム 2022年10月13日09:24

第1回 税関決算報告の実務知識

 税関決算報告は、ベトナムで事業を展開している企業、特に外資系企業にとっては難しい作業である。本記事では、ベトナム産業支援同盟(略称:VISA同盟)が税関決算報告に関する知識を共有し、企業の具体的なケースに回答する。

第1回  税関決算報告の実務知識

 輸出を行う加工・製造企業および輸出加工企業(EPE)は、必ず税関決算報告を作成しなければならない。企業は部品表(Bill of Materials)を通じて、輸入された材料の数量を輸出する完成品と対照する必要がある。税関決算報告を作成する際に留意すべき潜在リスクは以下のとおり。

 ・原材料在庫または完成品の実際のデータと税関システム上のデータの不整合。

 ・税関当局による通関後の調査で、差異の発生理由に対する証明根拠がない、もしくは説得力に欠ける。

 ・原材料または完成品の管理外の損失。

 ・行政違反による罰金・追徴のほか、税関当局から要注意企業として目をつけられる。

 これらの留意点に対するリスク対策は以下のとおり。

 ・原材料/半製品/製品の変動データの管理・記録・報告に関する企業の内部統制を見直す。

 ・適切な棚卸と在庫記録の調整を行う。

 ・税関手続きに関する必須事項を、正しくかつ十分に行う。

 ・リスク軽減に向けた、関連部門間での社内連携体制をチェックする。

 企業は出庫・入庫・在庫データを管理するために、倉庫部門、経理部門、輸出入部門が、厳格な社内プロセスを通じて情報を継続的に更新し、税関申告、決算報告時まで、調達、入庫、製造の各時点における正確なデータベースを作成する必要がある。以下のようなプロセスを参考にしてほしい。

具体的な事例について

  VISA同盟が2022年3月16日に開催した「税関決算報告における部品表(BOM)-リスク特定と対策」セミナーでの質疑応答から、具体的な事例を抜粋する。

A社の質問

――ある製品コードは、ネジがつく場合とネジがつかない場合があります。製品コードを分けた方がいいですか。

 両者を区別するために別々のコードを作成します。ネジがつく製品で1つの製品コード、ネジがつかない製品で1つの製品コードを作成します。

――Φ35の材料で製造する製品コードは、Φ31の材料で製造する場合もあります。BOMを2つのコードに分けた方がいいですか。

 材料が異なるため、BOMを別々のコードに分けて作成します。

――Nという製品を売る場合、A社に売るときは品名をABC-N、B社に売るときは品名をDEF-Nにしてもいいですか。

 Nという1つの製品を、A社に売るときはABC-N、B社に売るときはDEF-Nという品名にしても構いません。ただし、製品の共通名をつける必要があります(例:デジタルカメラABC-N、デジタルカメラDEF-N)。また、生産用原材料の出庫、完成品の入庫・出庫の詳細な追跡も必要です。

BOI (VIETNAM) COMPANY LIMITEDの質問

――当社では、輸出入部門が生産指示に従って実際に消費した部品表を作成しますが、経理部門は部品表(いわゆるBOM)に従ってコストを計算します。税関検査の際に問題はありませんか。

 税関検査の際、以下のケースに留意し、説明する必要があります。

 ・実際の生産指示が部品表(BOM)を上回る場合、上回った原材料の出庫票を証明する必要があります。

 ・実際の生産指示が部品表(BOM)を下回る場合、下回った原材料の再入庫票を証明する必要があります。

 ・実際の生産指示が部品表(BOM)と同じである場合、まったく問題はありません。

「税関決算報告の実務知識の共有」というトピックの一環として、次号ではVISA同盟による決算報告における部品表の作成について、次の内容で解説を行う。

 ・部品表の適切な分類方法と、決算報告での部品表作成プロセスにおける不要なミスの回避の仕方。

 ・税関代表者から見た起こりやすいミスについて。

 ・この作業に関する問題や疑問の解決策。

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