7〜8月の景気回復により、ベトナムGDPは第3四半期に前年同期比5.6%増、第4四半期に同7.6%増で、伸び率が拡大すると予想されている。

シンガポール大手銀行UOBが発表したベトナム経済展望レポートによると、第3四半期のGDP成長率が5.6%に達し、第1、2四半期からかなり上昇するものの、景気回復の勢いは依然として弱い見込みだ。
2023年上半期は成長鈍化
外需の低迷は製造業部門の不振と相まって、2023年のベトナム経済成長の勢いを鈍化させている。23年Q1とQ2の前年同期比の実質GDP成長率はそれぞれ3.28%、4.14%にとどまり、22年Q4の5.92%から著しく減速する。ゆえに、2023年上半期の前年同期比成長率は3.72%にしか達しておらず、2022年同期の6.46%や政府の成長目標の6.5%を大幅に下回っている。
下半期の先行きにもあまり明るいイメージが持てない。
ベトナム製造業の購買担当者景気指数(PMI)をみると、5月にPMIはわずか45.3ポイントで、21年9月以来の最低値を記録し、当時アジアで最悪のパフォーマンスとなった。8月のPMIが6月ぶりに50ポイントを超えたとはいえ、ベトナムのPMIは12カ月連続で東南アジア諸国のPMIを下回っている。
輸出入活動をみると、ベトナムの輸出は過去10カ月のうち9カ月で減少した一方、輸入は10カ月連続の減少を記録した(8月の輸出・輸入は前年同期比8.5%、5.8%減)。特に、最大輸出先の米国への輸出が同様に過去10カ月のうち9カ月で減少し、外需の低迷は明確に示されている。
好調に推移しているのはサービス部門
外需の弱さに対して、国内需要は比較的有望だと指摘されている。旅行関連支出の急増が響き、8月の小売売上高は前年同期比10%増だった。2023年末までに観光客到着数は2019年の少なくとも3分の2まで回復できる見通し。なお、サービス部門の成長は輸出・製造業部門の不振を十分に補えないため、23年Q3の実質GDP成長率に劇的な回復が期待できない。
UOBが予測するベトナムのGDP成長率は、2023年で前年比5.2%、2024年で6%となる。うち、23年Q3、Q4はそれぞれ前年同期比5.6%、7.6%伸びると見込まれている。一方で、ベトナム政府が設定した成長目標の6.5%に達するためには、下半期の平均成長率が9.2%以上でなければならない。今の市場状況では大きな挑戦になる。
今後の注目すべきリスク
UOBは、①「ロシア・ウクライナ紛争がエネルギー、食料および一次産品価格にもたらす影響」、②「グローバルサプライチェーンの変化や混乱」、③「中国の経済回復ペース」という3つの外部要因に着目することをすすめる。
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