専門家コラム 2023年07月11日09:13

ベトナムビジネスの基礎知識(第42回)労働法関連の罰則 その5

2022年1月17日に公布・施行された労働法に関係する罰則を定めた政令No.12/2022/ND-CP(政令12)において、実務上注意の必要な内容に関する解説の続きです。下記に罰金額の記載がありますが、この額は個人に対して適用される際のものであり、組織に対する罰金となると金額が2倍となります(同政令第6条1項)。この措置は政令12においてあらたに盛り込まれたものです。

ベトナムビジネスの基礎知識(第42回)労働法関連の罰則 その5

2.外国人の就労に関して

(1)外国人が雇用契約形態で就労するにあたり、労働許可書の発給当局に締結した雇用契約書の公証付きの写し、あるいは原本を送付する必要があり[政令No.152/2020/ND-CP(政令152)第11条3項]、実施しない場合には、100万~300万VNDの罰金となります(政令12第32条1項b)。

(2)雇用者は労働管理機関の要求に基づいて、外国人の雇用状況に関する報告を行う必要があります(政令152第6条)。その報告を行わない・その内容に誤りがある・期限内にその報告を実施しない場合には、100万~300万VNDの罰金となります(政令12条1項a)。

(3)雇用者だけでなく、就労する外国人本人への罰則もあります。失効した労働許可書(その免除の証明書)が使用されている場合には、本人に対して1,500万~2,500万VNDの罰金となります(同条3 項b)。また、労働許可書(その免除証明書)を取得せず就労した本人は、1,500万~2,500万VNDの罰金となり(同条3項a)、さらには国外退去処分も科されます(同条5項)。

3.賃金に関して

雇用者が下記に違反した場合、(ⅰ)から(ⅴ)では500万-1,000万VND(同政令第17 条1項)、(ⅵ)から(ⅸ)では500万-5,000万VNDの罰金(同条2項)となります。

(ⅰ)賃金テーブル・賃金表・労働基準量(以下では、一括して賃金テーブルと記載します。)を作成しない・公布前に労働基準量のトライアルを実施しない。

(ⅱ)賃金テーブル、賞与に関する規程を、実施前に公布・公開しない。

(ⅲ)賃金テーブル、賞与規程の作成に際して、雇用者が事業所における労働組合の代表部からの意見聴取を実施しない。

 (ⅳ)給与明細を通知しない、あるいは通知しても金額が規定に基づいていない。

 (ⅴ) 平等な賃金の支払いを保障しない・同等の価値を有する業務を行う被雇用者に対して性的な差別を行う。

(ⅵ)期限までの賃金の未払い、雇用契約書で合意した賃金・時間外労働手当・深夜勤務手当・休業時の賃金の未払い、 不十分な支払を行う。

(ⅶ)被雇用者の賃金の使用に関わる自己決定権を制限、又は干渉を行う。被雇用者 に対し、雇用者又は雇用者が指定するその他の事業者の商品の購入、又はサービスの使用に賃金を使用することを強制する。

(ⅷ)被雇用者の賃金からの違法な控除(注:労働法第102条3項に基づき、控除額の上限は各種強制保険・個人所得税を引いた賃金額の30%を超えない範囲です。)の実施・被雇用者を雇用契約と異なる業務に一時的に異動させる際の賃金、あるいはストライキ期間中の賃金の未払い・不十分な額の支払を行う。

(ⅸ)退職または失業により年次有給休暇を完全に取得していない、あるいは年次有給休暇を完全に消化していない場合において、年次有給休暇日数分の賃金の被雇用者への未払い、あるいは不十分な額の支払を雇用者が行う。

文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)  

東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。

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