専門家コラム 2023年06月02日10:07

ベトナムビジネスの基礎知識(第41回)労働法関連の罰則 その4

労働法に関わる罰則規定で、2022年1月17日に公布・施行された政令12/2022/ND-CP(政令12)に関する解説を続けます。今回からは従来からある罰則規定の中で、実務において特に注意が必要なものを選んで取り上げたいと考えます。なお、下記の罰金額は個人に対して適用される際の金額となっています。組織に対する罰金となる場合には、金額が2倍となります(同政令第6条1項)。

ベトナムビジネスの基礎知識(第41回)労働法関連の罰則 その4

Ⅲ.実務上の注意が必要な事項

1.雇用契約に関して

(1)契約の締結

以下の各事例に対する罰金額は、違反行為が生じた被雇用者の人数に応じて、200万~2,500万VNDです。また、雇用者に対しては、被雇用者と正規の雇用契書を締結する義務も生じます(同政令第9条1項)。

(ⅰ)満1ケ月以上の期間の業務で、書面による労働契約を締結しない。

(ⅱ)被雇用者と適切な形式の雇用契約を締結しない。

(ⅲ)主要な内容が不十分に記載された雇用契約書を締結する。

(ⅳ)労働法第18条2項に定める、季節的業務又は12ヶ月未満の期間で一定の業務を行う満18歳以上の被雇用者のグループから、雇用契約の締結の委任を受けた者と、書面による雇用契約書を締結しない。(注:労働法によればグループのメンバーから委任を受けた者が代理人として、雇用者と契約を締結する事が認められています。また、この契約は通常の雇用契約と同等の効力を持ちます。日系企業では過去にあまりない事例ですが、被雇用者側からこのような要求があった場合、雇用者としては拒否できないわけです。)

(2)試用契約

(ⅰ)試用契約期間が終了したのに、雇用契約書を締結しないまま、被雇用者が就労を続ける場合には、200万~500万VND(同政令第10条2項d)が科されます。

(ⅱ)雇用者には、正規の雇用契約を締結して、被雇用者に対して満額の給与を支払う義務も併せて生じます(同条3項)。 

(3)被雇用者の暫定的な異動

雇用者が、契約書に記載された以外の業務に、被雇用者を暫定的に異動させる場合、以下の規定に違反する場合には、100万から300万VNDの罰金(同政令第11条1項)が科されます。

(ⅰ)実施の3営業日前までに通知しない。

(ⅱ)暫定的な異動の期間を事前に通知しない、あるいは明確に通知しない。

(ⅲ)被雇用者の健康状態や性別に適する業務に配置しない。

(4)雇用に関する当局への報告義務

雇用者には、下記の(ⅰ)および(ⅱ)の管轄の行政当局への報告する義務があります(労働法第12条1項、政令No.145/2020/ND-CP第4条2項、政令No.35/2022/ND-CP第73条1項)。

これに違反した場合ですが、(ⅰ)では100万~300万VNDの罰金(政令12第8条1項a)(ⅱ)では500万~1,000万VNDの罰金が科されます(同政令第8条2項c)。

(ⅰ)事業活動の開始日(設立日)より30日以内に、区レベルの労働室、または工業団地管理委員会および社会保険局に対して、雇用に関する報告書を提出する。

(ⅱ)被雇用者に関する変動状況の報告書を、上記と同様の当局に、上期は6月5日までに、下期は12月5日までに提出する。 

文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)  

東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。

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