市場調査 2022年10月12日20:26

樹脂成形産業(その2)パッケージ

 包装(パッケージ)は品物の保護や輸送、宣伝等に重要な役割を果たしている。数多くの包装の素材のうちで、プラスチックは最も広く使用されている素材の一つである。プラスチックパッケージは付加価値の低い製品だが、樹脂業界の生産価値の約4割を占めている。統計局によると、プラスチックパッケージとビニール袋の生産量は2010年の66万2900トンから2020年の124万6020トンに増加した。

樹脂成形産業(その2)パッケージ

市場規模は急拡大

 2015年から2020年まで、ベトナムにおけるプラスチック包装資材製造業界は良好な成長を維持していた。その主な原因は食品・飲料業界や調味料業界、農薬業界、医薬品業界、ヘルスケア業界等からの需要が高まったことにある。プラスチック包装は食品業界や医薬品業界等以外に、電子部品の保管にも使われている。具体的には、静電気帯電防止アルミ袋や帯電防止アルミホイルバッグ、静電気シールドバッグ、帯電防止PE袋、バブルバッグといった静電気の帯電を防止できる包装が電子部品の保管に使用されている。

 プラスチックパッケージはベトナムの樹脂業界の主要な輸出品目でもある。ベトナム樹脂協会(VPA)の報告によると、プラスチック業界の年間輸出金額の66%がプラスチックパッケージだという。主要な輸出市場として、米国や日本、EUが挙げられる。ただし、プラスチックパッケージの輸出業者は、EUでビニール袋の利用を削減し、生分解性袋や包装に切り替えるという規定が可決されたことをはじめ、エコパッケージを利用する傾向が世界中に広がっていることや、米国がベトナムのPE袋に対して反補助金税と反ダンピング税を適用し続けていることに留意が必要だ。

外資も続々と参入

 軟質プラスチック包装市場は2020年にプラスチック包装業界の約8割を占め、国内外から巨額の投資を集めている。海外投資家から融資を受けた例として、Meiwa Paxの新工場(2020年、2170万ドル)やSt.Johns Packaging Vietnamの工場(2019年、1000万ドル)といったプロジェクトが目を引く。その一方で、多くのベトナム企業も同業界に進出しているが、大部分は小規模にとどまり、経営能力も低いため、外資系企業との競争は困難だ。

 軟質プラスチック包装(flexible packaging)には多層フィルム包装(multi-layered packaging)および単体フィルム包装(mono-layered packaging)という2種類がある。国内企業はシュリンクフィルムやTバッグ、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用ビニールといった多様な単体フィルム包装の製品を提供している。一方、複数のプラスチックフィルムから複合化された多層フィルム包装は主に外資系企業により提供されている。代表的な外資系企業として、Tan Tien Plastic Packaging Joint Stock Company(韓国)、Tin Thanh Packaging Joint Stock Company(タイ)、Saigon Trapaco(日本)、Huhtamaki (Vietnam) Co.,Ltd(フィンランド)、Fuji Seal Vietnam Co.,Ltd(日本)などが挙げられる。

原材料と設備は輸入依存

 現在、ベトナム企業は主に押出ラミネート、ドライラミネートおよび無溶剤ラミネートという3つの多層プラスチックフィルムの積層方法を採用している。押出ラミネートはコスト削減というメリットがある一方、製品にプラスチックのにおいがつくという問題点もある。ドライラミネートおよび無溶剤ラミネートは最近、徐々に普及しつつある。実際は、コスト最適化かつ顧客ニーズへの対応の目的で、複数の方法を組み合わせて製造を進めることが多い。

 プラスチック包装の製造に一般的に使用されているプラスチック素材といえば、PETやHDPE、LDPE、PP、PS等が挙げられる。他の業界と同様に、プラスチック包装業界も国内での原材料が不足するため、海外からの輸入に大きく依存するという問題を抱えている。また、射出成形機やフィルム成形機、インフレーション成形機といった機械設備も、大部分が海外から輸入されている。原材料は韓国、日本、中国、台湾、タイ、シンガポール、米国、中東等から調達され、機械設備は台湾と中国から安価に輸入されている。

文 株式会社NCネットワークベトナム Nguyen Thu Phuong/Nguyen Hoang Giang

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