市場調査 2022年10月12日19:09

ゴム産業(その1)

 ベトナムはタイとインドネシアに次ぐ世界第3位の天然ゴム生産国である。全国のゴムノキ栽培面積は100万ヘクタール(ha)近い。ベトナムの気候や土壌などの自然条件はゴムノキの栽培に適しており、東南部、中央高地、南中部海岸部には大規模なゴムノキ集中栽培地域がある。ゴムノキ栽培企業の中には、国内だけでなくラオスやカンボジアのゴム農園に投資しているところもある。

ゴム産業(その1)

天然ゴムの生産状況

 ベトナムは過去10年間にわたり天然ゴム収穫量の上位国にランクインしており、年間収穫量は1.67~1.72トン/ha。2019年の収穫量ランキングでは1.67トン/haで世界1位だった。2位はタイ(1.48トン)で、マレーシア(1.46トン)、インド(1.44トン)、カンボジア(1.15トン)、インドネシア・中国(約1トン)と続いた。

 天然ゴム生産国連合(ANRPC)は、2020年も引き続きベトナムがトップであると評価している。ベトナムが種子品質や栽培技術、樹液収穫技術などの研究や改善に力を入れてきたことが、これらの成果につながった。

 Vietnam Rubber Group(VRG)はベトナム最大の天然ゴム生産者であり、同グループの国内外のゴムノキ栽培面積は40万2,650ha以上(2020年時点)。グループ傘下のDong Nai、Dau Tieng、Phuoc Hoa、Phu Rieng、Dong Phu、Tay Ninhといった企業は高い収穫量を維持している。

 合成ゴムについては、現在ベトナムには国内生産企業がないため、ゴム製品を製造する企業は必要に応じて欧州や台湾、韓国などから100%輸入する必要がある。輸入した合成ゴムを使ってより高品質の輸出品を製造することで、ゴム産業の付加価値を高めることができる。 

輸出入の動向

 ベトナム税関総局が発表した2021年上半期(1~6月)の貿易統計(速報値)によると、天然ゴム輸出量は前年同期比48.2%増の71万4,319トン、輸出額は前年同期比88.5%増の12億USD(約1,300億円)、平均単価は1,685USD/トンだった。コロナ禍の中で、これらの数字はゴム産業にとって前向きな兆候と考えられる。

 天然ゴムと合成ゴムを含むゴム材料の上半期の輸入量は87万2,788トン、輸入額は13億USD(約1,430億円)と推定される。そのうち天然ゴムの輸入量は60万9,133トン、輸入額は7億290万USD(約773億円)で平均単価は1,154USD/トンと推定される。

 主要な輸入市場はラオスとカンボジアだ。2015年以降、この2ヶ国から輸入される天然ゴムは、主にベトナム企業が投資したゴム農園で収穫したものである。地理的に遠く、現地の加工工場が不足しているため、一部の企業は天然ゴムをベトナムに輸送し、国内で加工して輸出する傾向がある。

 天然ゴムに比べ、合成ゴムは常にコストが高く、平均輸入価格は2,205USD/トン。主要な輸入市場は台湾と韓国で、輸入量は26万3,655トン、輸入額は5億8,150万USD(約640億円)と推定される。

ベトナムのゴム製品

 輸入材を含めゴム材料の約20%は国内生産に使用される。ベトナムの主要ゴム製品の一つはタイヤで、ゴム製品全体の約70%を占める。そのほか、エンジニアリングゴム、靴底、手袋、ゴム糸、コンベアベルト、マットレスなどが生産されています。

 ゴム産業の企業によると、国内生産の天然ゴムは、家庭用品や、高温や潤滑油との接触がない製品の製造にしか使えないという。耐熱性が求められ、さまざまな環境下での使用に耐える工業製品を生産するには、高品質の工業用ゴムを使用する必要がある。この種のゴムの需要は非常に高いが、最新技術への投資が欠かせず、現状、投資できるだけの能力と資金力を持つ企業はほとんどない。 

 2021年上半期のゴム製品の輸出額は前年同期比46%増の19億6,000万USD(約2,160億円)と推定される。主要な輸出品目はタイヤ、ゴム手袋と衣服、ゴム部品とエンジニアリングゴム、靴底である。次回はベトナムのゴム成形企業について詳述する。

文 株式会社NCネットワークベトナム Nguyen Thu Phuong/Nguyen Hoang Giang

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