専門家コラム 2023年02月12日16:43

2022年のベトナムでの工場建設:投資家が知っておくべき新しい基準と法令

 4月号の記事「ポストコロナ時代、投資家が注意すべき安値の罠」の続編として、今回はDELCO Construction and Investment Joint Stock Companyのレー・カイン・マイン社長に2022~2023年のベトナムでの工場建設に関する変化について訊いた。

2022年のベトナムでの工場建設:投資家が知っておくべき新しい基準と法令

投資家が知っておくべき投資に関する新しい法律文書

――前回は、見積もりを評価する際の注意点について伺いました。他にもベトナムでの効果的な投資計画と工場建設のために投資家が注意すべきことは何かありますか。

 投資家は、入札書に加えて、工場の基盤形成となるコンサルティングの段階でも注意を払う必要があります。優れたコンサルタントと協力すると、投資家は時間・コストの節約や行政手続きの簡素化を実現できるほか、工場の設計と技術要件も正確に視覚化できます。DELCOは、最初のコンサルティング段階の失敗により、その後のベトナム政府機関への審査・検査手続きの際に多くの問題が発生したプロジェクトをたくさん知っています。

――優れたコンサルタントの採用は、工場の建設コストを押し上げることになりませんか。

 いいえ、その逆です。多くの投資家は、コンサルティング会社の支援は投資登録手続きや工場設立の初期段階だけと思いがちです。しかし、コンサルティング会社が提案する計画は、その後の設計や審査・検査手続きの実施、工場建設に直接影響します。例えば、すべての工場が環境影響評価報告書を作成する必要があるわけではなく、環境保護計画を作成するだけでよい小規模の工場もあります。後者は前者より簡単ですから、投資家にとって手続きにかかる時間だけでなく、その後の施工コストを大幅に節約できます。コンサルティング会社は投資家に適切なコンサルティングを実施するために、手続きや書類だけでなく、ベトナムの法律規定の詳細まで把握しなければなりません。

 他の例ですが、工業団地に工場を建設する場合、ほとんどの工場の排水基準はB基準です。工場からの排水は、引き続き工業団地の集中排水処理エリアで処理されます。しかし、工業団地外に工場を建設する場合、排水は周辺環境に直接排出されるため、ベトナムの規定に従いA基準に準拠しなければなりません。コンサルティング会社は、投資家が適切な予算と投資計画を立てられるような提案を出す必要があります。それができないと、投資家は後から法的な問題を抱えることになります。

工場の排水処理システム

――コロナ前(2019年)に比べて、ベトナムでの工場の設計・建設に関する規定や基準は何か変更がありますか。

 2020~2022年の間に、ベトナムでは工場建設に関連する新しい規定が次々と改訂されています。現在、ベトナムでの工場や工業施設の建設を計画している投資家には、以下の法律文書をよく読むことをお勧めします。

 住宅及び建設物に対する火災安全規格であるQCVN 06:2020/BXD:QCVN 06:2010/BXDに代わり2020年07月1日から発効しました。QCVN 06:2020/BXDには、工業施設(工場、生産工場、原材料倉庫など)に対する火災安全基準・規制の適用範囲に関する多くの重要な改訂があります。

 ・建設計画に関する規格であるQCVN 01:2021/BXD:通達No.01/2021/TT-BXDに付属して公布されました。QCVN 01:2021/BXDには、正味建設密度と建設密度に関する規定の変更が多くあります。正味建設密度と建設密度は建設物の高さに関係がないと再定義されています。この新しい重要な改訂により、投資家は階数を増やして土地を最大限に活用できます(例えば、工場を2階建てか3階建てにして容積率を最適化する)

  2020年環境保護法:2022年1月1日から発効しました。同法には、プロジェクトの分類基準の変更のほか、許可書の交付、環境影響報告書の審査を管轄する省庁にも変更があります。

――では、2022年のベトナムの外国投資家に対する法律規定には何か変更がありますか。

 私の知る限りでは、ベトナムの投資法にもいくつかの変更があります。現行法は2020年投資法です。投資家は政府からの優遇政策を享受するために、投資優遇の対象となる業種や投資優遇プロジェクト、特別投資支援プロジェクトなどについても調べてください。

 また、外国投資の制限業種や定款資本に占める外国資本率の変更、書類提出時の行政手続きに関する改訂などもあります。コロナ禍により中断していた対ベトナム投資を実行する予定の投資家は、合法的な権利と利益を確保するために、改めて法律文書をよく確認してください。

多層階、ロジスティクスの最適化、スマートテクノロジーの応用が常識に

――ベトナムでの工場設計・建設について、今後のトレンドはどうなると考えますか。

 投資家は、輸送コスト(ロジスティクス)の最適化にますます関心を高めると思います。ガソリン価格の急騰により、ベトナム国内の輸送コストが上昇し、生産コストと製品のコスト構造に影響しています。そのため、投資家は、工場建設場所を選択する際に、この点を重視するようになると思います。

 また、ベトナムのみならず世界では2階建て、3階建ての工場がトレンドとなっています。多層階の工場は、投資家にとって土地利用効率の向上や、1㎡あたりのコスト削減になるだけでなく、工業団地管理委員会にとっても合理的な土地活用につながります。

 それと並行して、従来の建築材の代わりに持続可能な建築材を使用したいという投資家が増えています。寿命が長く、リサイクル可能という特徴から、持続可能な建築材はエネルギーとランニングコストの節約につながります。

 最後に、工場建設、特にMEPシステムに対する新テクノロジー導入への関心がますます高まっています。スマート設備やスマート工場システムの導入により、エネルギーコストの管理と最適化、生産工程や生産活動の最適化が可能となり、ランニングコストの節約だけでなく、研究開発(R&D)の時間とコストの節約にもつながるからです。

――法規制と市場の需要の変化は、マイン社長およびDELCOにどのようなメリットとデメリットをもたらしますか。

 市場の競争圧力は課題の一つです。ベトナム工場建設業界は新規参入が多く、DELCOは落札を目指して、投資家向けかつ社内管理用の新しい技術を常に取り入れています。競争し生き残るためには、継続して研究開発に注力しなければなりません。

 一方、法規制と投資家の視野の変化はDELCOにメリットももたらします。創業以来15年間、DELCOは、事故発生時に労働者、機械設備、生産ラインの安全を確保できる質の高い防火・排水処理システムを備えた持続可能な工場の建設を目指して、コンサルティングと設計を行ってきました。5年前まで、ベトナムではこれらの問題に関する法整備が不十分であり、DELCOは安価で品質の悪いプロジェクトと競争せざるを得ませんでした。しかし、規制が整備されるにつれて、DELCOが追及している価値が認められるようになり、とても嬉しく思います。今後さらに平等な市場で競争できることを期待しています。

工場の防火システム

――競争力を高めるためにDELCOの開発戦略を変更しますか。

 今の方針を維持します。お客様のために最善を尽くしていけば、必ずお客様の理解と信頼を得られると信じています。過去15年間の競争戦略はそれを軸に展開されています。

 今後変化するとすれば、主に人材採用・教育プログラムや、DELCOの次世代を担う人材のための新しいソリューション・テクノロジーの導入です。また、品質と法的要件を確保しつつ、さらなる投資家のコスト最適化を図るために、新しい工法とプロジェクト管理方法も検討します。市場の競争が激化する中、唯一生き残る方法は専門化だと考えています。

――マイン社長、どうもありがとうございました。

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