本記事では、MBFC FINANCIAL CONSULTANT CO.,LTD(以下、MBFC)より、企業にとって最も重要な経営課題の一つである「事業運営における主な資金源」について解説する。執筆者であるMBFC社長のグエン・ティ・フォン・ホア氏は、20年以上にわたり在ベトナム企業に対して財務コンサルティング及びトレーニング活動を行っている。
会社設立から大企業になるまでには、一般的に小規模企業、中規模企業、大企業という3段階を経る。事業主や経営陣はあらゆる段階において、事業推進・発展に必要な資金をどう調達するかという問題に頭を悩ませている。小規模企業の段階においては、主に株式発行や銀行融資、または税引き後の利益を再投資するという資金調達方法が採用される。中規模企業になると、事業拡大とともに必要な資本金も増加する。増加分の大半はプロジェクト実行のために借り入れられるため、財務コストがかかるほかに、財務リスクも高まる。資本コストを削減し、効果的に資金を調達するため、企業は新規株式公開 (IPO)で市場外からも資金を集める。それにより、より大きなプロジェクト、特に投資額3000億VND以上(1500万USD相当)のプロジェクトを実行するのに十分な資金を得ることができる。
以下、主な資金源を紹介する。
①事業主からの資本(または自己資本):創業メンバーが事業を開発するために出資したもの。
②借入資本:銀行、友人、親戚等から借入れ、通常一定の利率で利息を支払わなければならないもの。借入にかかる利息は財務コストともいう。現在、一部の国営銀行は、政府による開発奨励業種の大規模プロジェクトに6.5%未満の低金利で資金を提供している。また、企業が在庫管理及び在庫回転率を最適化できれば、債務返済期間が最長7カ月になる信用状取引(L/C)も運転資金として利用可能だ。その場合は資金を効果的に運用でき、財務コストも大幅に削減できる。
③買掛金の運用:貿易会社や輸入会社は、1年未満の短期間で買掛金を資金としてよく利用している。特に、輸入会社はしばしば多額の掛取引を申請できるため、海外サプライヤーとうまく交渉ができれば、これは長期的な資金源になりうる。建設業界では、投資家が長期的に請負業者の資金を運用することもある(工事完了まで2~3年かかるため、一般的に1年以上)。
④株式や社債発行:生産規模の拡大や大プロジェクトへの資金調達の際は、借入金利が高いため、株式を発行することで資金が調達できる。また、預金金利よりも高い利率をもつ社債を発行し、資金を集める企業も存在する。
⑤金融機関や投資機関、プロジェクトへの参加やプロジェクトの一部購入を希望する合弁会社や関連会社から調達した資金:プロジェクト完了後、投資家は一定の割合で利益を得る。
⑥事業利益の再投資:獲得した利益の一部は現在の事業や新規プロジェクトに再投資される。
⑦ファイナンス・リース:資本金は少ないが、長期の大量生産注文を受けている場合、ファイナンス・リースを行い、生産を進めることができる。企業は生産活動から獲得した利益でリース料を定期的に支払う。リース契約が終了次第、借りていた設備は会社の所有物になる。
企業形態、規模、それぞれの時点における財務戦略やビジョンに応じ、資金の運用方法は異なる。多くの企業、特に財務管理に関する知識が乏しく、財務に関する意思決定を行う際に数多くのリスクに直面し自ら判断しなければならない起業家にとって、この点は困難なチャレンジのひとつだろう。適切に資金を運用しなければ、予期せぬ結果につながる。資金は企業の命綱であり、長期的な資金不足は会社売却や倒産の結果を招く可能性もある。
以下、異なる形態の企業による資金の運用事例について紹介する。
商社:現在、資本金500億~5000億VND(250~2500万USD相当)の在ベトナムの消費財商社は、主に銀行融資や短期融資を受け、運転資金の循環や短い販売サイクルでの定期的な売上金の回収等に利用している。それに加え、約6%の低金利で債務返済期間が最長7カ月の信用状取引(L/C)を同時に活用することで、資金を非常に効果的かつ柔軟に運用している。
中小規模の製造企業:工場や工場用地を抵当に入れ、銀行から中長期的な融資を受け、設備投資を行っている。その他、生産活動、マーケティング、販売活動等のために短期借入も活用する。但し、銀行融資には担保となる資産が必要になるため、まだ規模が小さく、費用に対し十分な売上がない企業にとってはハードルが高い。そういった企業の中には、国内企業や海外企業とのジョイントベンチャー形式による資金調達という方法をとる企業も見られるようになった。すなわち、企業側は土地、工場、設備等を資本として提供し生産活動を行う一方で、パートナー側は資金や技術支援等を提供する。場合によっては、パートナー側が製品の販売も担当する。
国営企業:かつて国有企業であった多くの大規模製造企業は、現在株式化されている。それらの企業は既存の生産施設を持ち、長年勤務する従業員を抱え、収益が比較的安定している輸出注文を受けている。その上で、新株発行で資金を集め、生産を拡大するため、業績の伸びは著しい。特に、主力事業以外に投資しない企業は過去15年間、持続的な発展を遂げてきた。これらの企業の資金源は、借入資本ではなく事業利益の再投資や株式発行であるため、財務コストが削減され、収益が上がる。
また、水力発電といった特別な産業に属する企業の大多数は、施設建設にかかる費用を長期融資で調達し、9~12年間で利息と元本の支払いを完了させ、事業稼働以降は借入資本をほとんど利用しない。さらに、これらの業界は過去20年間にわたり政府から多くの優遇政策を受けているため、低金利の銀行融資で得た資金が効果的に運用されている。
建設・不動産業界の企業:多くの場合、インフラ構築のための銀行融資、及びプロジェクト実行のための株式・社債発行の両方を通じて資金を調達する。それ以外に、プロジェクトの各段階で支払われる売上高も重要な資金源の一つになる。この資金の調達方法を採用するのはマンション、タウンハウス、リゾートマンションといった大半の住宅プロジェクトである。
ベトナムに工場を持つ外国企業:大半が親会社と密接な資本関係にある。工場建設や初期生産、市場開拓戦略、マーケティング等にかかる費用のほぼ100%は、親会社が提供または管理する。なお、国内の銀行から融資を受け、現地での生産活動を行うための運転資金として利用する企業も存在する。
上記はMBFCが簡潔に要約した最も基本的なコーポレートファイナンスの知識である。コーポレートファイナンスの知識をしっかり理解することにより、経営陣及び経理部は資金源や他のコストを効率的に管理し、利益の最大化を達成することができる。
文/グエン・ティ・フォン・ホア MBFC FINANCIAL CONSULTANT CO.,LTD社長
USCP ヨーロッパビジネススクール及びドーフィ ン・ユニバーサイト パリで銀行の経済学およびコー ポレート・トラックの修士号を取得。 大企業にお ける財務および会計システムの管理運用に関し、 20 年の経験を持つ。 消費財の生産・流通、国家 プロジェクト、建設、 水力発電、 不動産等のビジ ネスを手掛ける年収数兆 VND の大企業でCFO に 就いた経験あり。
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