行政当局への提出が必要な報告書について解説します。本件に関わる罰則規定は、新たな政令No.12 / 2022 / ND-CP(以下では政令12)が、本年1月より公布・施行されており、新たな政令では罰則が厳格化された箇所もあります。
Ⅰ.行政当局への提出が必要な報告書
現行法規に基づき、労務関連で提出が必要な報告書は下記の通りです。これらの報告書の提出義務は、法人だけではなく、駐在員事務所、支店、プロジェクト事務所などすべての雇用者に対して課されています。報告書名の横にある記載は提出の頻度です。
(1)被雇用者に関する変動状況(年2回)
(2)外国人就労者の使用状況(年2回)
(3)労働安全・労働衛生の状況(年1回)
(4)労働災害の統計・報告(年2回)
(5)失業保険の加入状況(年1回)
(6)被雇用者数の変動状況(変動状況に応じて)
(7)事業活動の開始時点における被雇用者の使用状況(設立時に1回限り)
Ⅱ.各報告書の概要
以下では各報告書に記載する内容、提出期限、罰則などについて解説します。
1. 被雇用者に関する変動状況
1.1 根拠法令
政令No.145/2020/ND-CPの第4条2項
1.2 主要な記載内容
各被雇用者に関する情報(職位、専門職名、賃金、雇用契約の種類と発効日など)
1.3 提出期限
上半期の報告書:6月5日まで
年次の報告書:12月5日まで
1.4 提出先
国家公共サービス・ポータルサイトを通じて、所在地の労働傷病兵社会局に提出。サイトから提出できない場合、同局に紙を送付し、レベル社会保険機関への通知が必要。
1.5 罰則規定
報告しない雇用者には、500万~1,000万VNDの罰金(政令12第8条2項c)従来の罰金額は、政令28の第7条1項cに基づき、100万~300万VNDでした。
2. 外国人就労者の使用状況
2.1 根拠法
政令No.152/2020/ND-CP第6条
2.2 主要な記載内容
外国人就労者の情報(国籍、年初からの人数、各職位ごとの人数など)
2.3 提出期限
上半期の報告:7月5日まで
年次報告:翌年の1月5日まで
2.4 提出先
所在地の労働傷病兵社会局
2.5 罰則
期限までに報告しない、または事実と異なる報告をした雇用者には、100万〜300万VNDの金(政令12第32条1項a)。
3. 労働安全・労働衛生の状況
3.1. 根拠法
通達No.07/2016/TT-BLDTBXH第10条
3.2 主要な記載内容
労働安全衛生の担当者数・労働災害と職業病の発生件数、その罹災者数・健康診断結果・労働環境計測の結果およびその実施時期・労働安全衛生に係る経費など
3.3 提出期限
年次報告、翌年1月10日まで
3.4 提出先
所在地の労働傷病兵社会局、および医療局
3.5 罰則規定
期限までに報告しない、または不完全事実と異なる報告をした雇用者には、100万〜300万VNDの制金(政令12第20条2項)
次回もこれについての解説を続けます。
文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)
東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。