専門家コラム 2022年10月13日09:10

ベトナムビジネスの基礎知識(第29回)労務に関連する行政当局への報告書類について(1)

 行政当局への提出が必要な報告書について解説します。本件に関わる罰則規定は、新たな政令No.12 / 2022 / ND-CP(以下では政令12)が、本年1月より公布・施行されており、新たな政令では罰則が厳格化された箇所もあります。

ベトナムビジネスの基礎知識(第29回)労務に関連する行政当局への報告書類について(1)

Ⅰ.行政当局への提出が必要な報告書

 現行法規に基づき、労務関連で提出が必要な報告書は下記の通りです。これらの報告書の提出義務は、法人だけではなく、駐在員事務所、支店、プロジェクト事務所などすべての雇用者に対して課されています。報告書名の横にある記載は提出の頻度です。

   (1)被雇用者に関する変動状況(年2回)

   (2)外国人就労者の使用状況(年2回)

   (3)労働安全・労働衛生の状況(年1回)

   (4)労働災害の統計・報告(年2回)

   (5)失業保険の加入状況(年1回)

   (6)被雇用者数の変動状況(変動状況に応じて)

   (7)事業活動の開始時点における被雇用者の使用状況(設立時に1回限り)

Ⅱ.各報告書の概要

 以下では各報告書に記載する内容、提出期限、罰則などについて解説します。

 1. 被雇用者に関する変動状況

  1.1 根拠法令

  政令No.145/2020/ND-CPの第4条2項

  1.2 主要な記載内容

  各被雇用者に関する情報(職位、専門職名、賃金、雇用契約の種類と発効日など)

  1.3 提出期限

  上半期の報告書:6月5日まで

  年次の報告書:12月5日まで

  1.4 提出先

  国家公共サービス・ポータルサイトを通じて、所在地の労働傷病兵社会局に提出。サイトから提出できない場合、同局に紙を送付、レベル社会保険機関への通知が必要。

  1.5 罰則規定

  報告しない雇用者には、500万~1,000万VNDの罰金(政令12第8条2項c)従来の罰金額は、政令28の第7条1項cに基づき、100万~300万VNDでした。

 2. 外国人就労者の使用状況

  2.1  根拠法

  政令No.152/2020/ND-CP第6条

  2.2  主要な記載内容

  外国人就労者の情報(国籍、年初からの人数、各職位ごとの人数など)

  2.3  提出期限

  上半期の報告:7月5日まで

  年次報告:翌年の1月5日まで

  2.4  提出先

  所在地の労働傷病兵社会局

  2.5 罰則

  期限までに報告ない、または事実と異なる報告をた雇用者には、100万300万VNDの金(政令12第32条1項a)。

 3. 労働安全・労働衛生の状況

  3.1. 根拠法 

  通達No.07/2016/TT-BLDTBXH第10条

  3.2 主要な記載内容

  労働安全衛生の担当者数・労働災害と職業病の発生件数、その罹災者数・健康診断結果・労働環境計測の結果およびその実施時期・労働安全衛生に係る経費など

  3.3 提出期限

  年次報告、翌年1月10日まで

  3.4  提出先

  所在地の労働傷病兵社会局、および医療局

  3.5   罰則規定

  期限までに報告ない、または不完全事実と異なる報告をた雇用者には、100万300万VNDの金(政令12第20条2項)

 次回もこれについて解説を続けます。

文/斉藤雄久(さいとうたかひさ)  

東京都葛飾区出身、 早稲田大学社会科学部卒。 1994年12月のハノイ大学 への留学以降、 ベトナム在住は25年以上となる。 現在 AIC Vietnam Co.,Ltd. の President。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規に 基づく最も実務的なアドバイス業務を実践するほか、 国内外での講演も多数。                                   

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