市場調査 2023年12月14日01:26

粉体塗装~在ベトナム日系企業の優れた技術

エミダスマガジン2023年5月号では、粉体塗装の原理、プロセス、応用、そしてこの分野のベトナム企業の現状といった粉体塗装の概要と技術について触れた。本記事ではそれに引き続き、在ベトナム日系企業の粉体塗装技術についてご紹介したい。

粉体塗装~在ベトナム日系企業の優れた技術

本稿の執筆にあたり、板金加工の在ベトナム日系企業2社に話をうかがった。どちらの企業も、塗装工程は生産ラインの仕上げであり、顧客に質の高い完全なサービスを提供するための重要な工程であると認識している。

排水処理装置を完備

日本企業と言えば、製品品質のすばらしさについて触れないわけにはいかないだろう。日本企業では各処理槽から乾燥炉、塗装ラインといった設備へしっかりとした投資が行われていることは明白だ。さらに厳格に管理された手順により、精度や効率の良い作業が保証されている。

例えば、塗装前の表面処理工程ではリン酸亜鉛皮膜処理を行う。脱脂槽、形成層で使用される薬品やリン酸塩は、薬品の種類、新しく調合された薬品、追加される薬品、交換時間などを厳しく管理される。

表面処理ライン(写真提供/Nissin Electric Vietnam Co.,Ltd)

浸漬時間・温度、汚染度、浸漬形式、検査方法などの技術指標は具体的に示され、浸漬、洗浄のライン全体がチェックされる。各処理槽を通過して洗浄された製品の表面にはリン酸亜鉛皮膜が作られ、製品の腐食を防止する。この皮膜を検査、分析し、密着度、膜厚、成分を評価できる。

表面処理ライン(写真提供/Kai Metal Asia Co.,Ltd)

インタビューした2社ともに、各槽の廃水の一部または全部を処理する廃水処理設備を備えている。カイメタル アジア社の担当者は、「自社で排水処理装置を完備している。水洗槽、純水槽等のオーバーフローした廃液は、自社の排水処理装置で処理し工場外に放出している。薬液槽の廃液については、廃液産廃業者に回収してもらっている。排水処理基準については、毎日自社での点検実施。月一回、工場団地側での排水処理検査があり基準を満たしている」と語る。一方、日新電機ベトナム社も各槽からの廃水を処理する容積約70㎥の処理設備を備えており、廃水による環境汚染がないことを保証している。

費用が高いことを理由に、このような廃水処理設備を設置するベトナム企業は非常に少ない。ただし、このことは生産過程における企業の環境や社会に対する責任感の表れとも言える。今日では環境保護問題に対する関心がますます高まっている。企業は環境保護対策の実施について、政府や管轄機関、それに顧客からの厳しい圧力から逃れることはできない。廃水処理設備を完備することは、企業の持続可能な将来への投資でもあり、グローバル市場へ参入する際の強みにもなるだろう。

品質管理と人材教育を徹底

塗装~乾燥工程では、大型製品と小型製品で異なる処理方法が適用される。小型の製品は、通常、吊り式ラインで塗装~乾燥が行われる。製品は前処理が行われた後、ハンガーで塗装ブースに運ばれる。ここで各企業は表面に塗料を吹き付けるためのスプレーガンを使用し、自動または熟練した作業者による手作業で作業が行われる。製品が複雑で溝や凹凸が多くなればなるほど、塗装プロセスは複雑になり時間がかかる。

粉体塗装ブース(写真提供/Nissin Electric Vietnam Co.,Ltd)

塗装後、製品は吊り式ラインで清浄な密閉空間へ運ばれ、自然乾燥させた後に検査エリアへ運ばれる。日本企業におけるこのような生産ラインは、試作から塗料調合、塗装種類の選択、塗装の外注先、塗装原料に至るまで厳しく管理されている。大型製品の場合は吊り式ラインを使うことはできないため、乾燥炉の使用や個別に設計されたブースが必要になる。

乾燥炉(写真提供/Kai Metal Asia Co.,Ltd)

焼付炉(バッチ炉)(写真提供/Nissin Electric Vietnam Co.,Ltd)

労働者の安全確保対策も非常に厳しく実施されている。作業者はゴーグル、防塵マスク、塗装用の作業服と手袋を着用する。また、溶剤塗装を実施しているある企業では、塗装場所に回収用の水槽を追加設置し、余った塗料を回収して水槽内に落ちるように設計している。従って、塗装スペースは常に清潔で、環境を保護し作業者の健康を守っている。

作業者が塗装を行う(写真提供/Kai Metal Asia Co.,Ltd)

製品検査は、製品品質を誇る日本企業にとって重要な工程だ。製品は美しい塗装層と高い品質を確保するために、前処理も含めて工程毎に細かく検査される。行われる検査は、表面(外観)検査、測定機器やゲージ、治具による寸法検査、原料の硬度検査、形状公差検査、二次元測定機・三次元測定機による位置検査など。特に塗装では、専用装置を使って塗料層の色差、膜厚、グロスの検査を行う。これはベトナム企業や小規模企業がまだ実施していない、または実施しているが不十分である工程で、そのために製品の競争力がなく、輸出することができない。

検査工程(写真提供/Nissin Electric Vietnam Co.,Ltd)

一般的に、日本企業はベトナム企業よりも一貫性のあるしっかりとした設備投資を行っている。さらに長年にわたる経験や責任感により、生産プロセスの最適化と製品の品質保証のための改善を常に怠らない。

設備だけでなく、人材教育も重視している。企業には従業員のスキル向上のための定期的な教育プログラムがある。管理職の人材も日本での教育を受けたり、日本で実際に働いた経験を持っている。このような人材が、ベトナム帰国後に高度人材として自身の知見を他の従業員に伝えているのである。

ベトナムでは、自動車や工業機械、電気・電子などの工業の発展とともに、粉体塗装分野も非常に大きな成長の可能性を秘めている。日新電機ベトナム社の担当者は次のように語る。

「多くの企業がベトナムに注目し、新規進出・中国からの移管などを進めている。日本では溶接や塗装など専門的な技術者の高齢化が問題となっているので、ベトナムの若者達が技術と知識を身につけることで、更なる発展に繋がっていくのではないかと考える」

ただし、ベトナムの裾野産業が未熟であるため、塗料や関連設備を国内で調達することには多くの課題がある。原料の輸入依存は、ベトナムの工業界の大多数の企業にとって難解な問題だ。粉体塗装企業にとって塗料の輸入は、輸入税や国際輸送コスト、国際市場での原料価格の変動などによる生産コストの上昇につながっている。また、人材に関しては、専門知識やスキルの問題とともに、ベトナム人スタッフの品質や安全に対する意識の低さも挙げられている。これらの問題は、粉体塗装分野をはじめベトナムの工業界の持続可能な発展に突き付けられている大きな挑戦とも言えるだろう。

※本稿執筆にあたり、Kai Metal Asia Co.,Ltd様、Nissin Electric Vietnam Co.,Ltd様よりご協力いただきました。

文/Nguyen Hoang Hang NC Network Vietnam
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